Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

決別

 
フラアもコーデリアに対し、今さら自分の弱い部分や甘えを見せようなんて考えもしない。
必死に涙が出そうになるのを堪えて話題を変える。
 「もし、・・・ほ、法王庁の人間に見つかったらあなたもただじゃ済まないわよ?」
 「へっ! 言っとくがアタシはそんなにお人好しじゃない、
 見つかったら、フラア! お前に無理やり奪い取られたことにするからな!
 捕まりたくなかったら、さっさとお行きよ!」
 「グスッ・・・フフ、はいはい、
 あ、あなたはそういう人だったわよね、コーデリア・・・。
 でも・・・あたし・・・あなたのこと・・・!」
フラアにしても意地っ張りだ。
これまでのことを水に流して、お礼を言うとか、態度を急変させるとかは考えられなかった。
でも・・・力が涌いた・・・。
最悪の状況の中で、最も期待していなかった相手が差し伸べてくれた手・・・。
それがどんなにフラアの励みになったことか・・・。

コーデリアは自分の顔を覗き込むフラアの瞳に、
今まで、何でこんな小娘にイラついてきたのか、今になってわかったような気がした。
他の連中は自分に対し、ビクビクオドオド、視線を下げているのに、
このフラアだけは、どんな時でも真っすぐ自分を見返してくる。
決してへりくだらず、人の顔色を窺いもせずに・・・。
そんな風に他人に直視されることに、コーデリアは慣れてなかったのかもしれない。
 一々、人の顔、覗きこむなよ! そんな風な目でアタシを見るな!
 そんな表情で、お前はあたしに対し何を言いたいんだよ!?
だからこそ、いつもお互い、感情をぶつけあってしまったのだろう・・・。
自己満足・・・結局はそれでいい・・・。
自分の行動がフラアを救う、自分の良心に従った結果だ・・・。
そして長年、胸につかえていた疑問も、少しは晴れた気がする・・・。

既に距離が離れると、互いの顔や表情は見えなくなっていたが、
最後にフラアはコーデリアに笑顔を向けると、
迷いを捨てて、排水門の斜めった城壁を滑り落ちるように降りて、
またもや擦り傷を作りながらも、何とか土の大地に着地することができた。
ま、着地と言うか、這いつくばるような態勢でどうにかってところだけど・・・。
今日は何回、落下したのだろうか? 数えるのも面倒臭い。
ランプは何とか無事だ・・・。
火の揺らめきはかなり危なっかしかったが、地面に激突させることだけは免れた。
後は兄の言っていた、幽霊の出ると言う遺跡に向かって・・・。

さよなら・・・王都ラシ・・・、
さよならコーデリア・・・、
さようなら、私が育った街・・・。