Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

白い小さな手

 
 ドガタァン!!
 えっ!?
フラアが振り向くと、先ほど自分が落下してきた穴の上方から声が聞こえる・・・。
まさか・・・。

 「おい! 見つけたぞ! この穴の下だ!
 間違いねぇ、雨で地盤が緩んで、この穴の中に落っこちやがったんだろう!」
 「でも入れるか? 中で死んじまったんじゃないか?」
 「捕縛用のロープがあるだろう、そいつで一人ずつ下りて見よう。
 ロープの長さが足りないようなら、今晩はあきらめるしかないが・・・。」
冗談じゃない!
自分がそんなに怪我をしなかったこと、及び今の声の位置を考慮すると、
恐らく2メートルかそれぐらいの高さだったのだろう、
ロープで降りてこられてはあっという間に!!
すぐに逃げることを考えたが、
もうそんな体力などありはしない・・・。

フラアは先ほどまで観察していた物体を背にして、どこか隠れる場所はないかと、
無意識のうちにカラダをずらしていた・・・。
その視線は、追手が下りてきそうな先ほどの穴の部分に釘づけになったままだ。

そして彼女は気づかない・・・。
背中の光る物体が動き始めた事を。
「それ」は静かな音を発し・・・、少しずつ・・・少しずつ、
フラアの腰の辺りから上方に・・・それこそ真っ二つに割れるような動きを示した。
まるでその様は、巨大な焼き蛤が開いていくような・・・。

そして天井の穴からロープが垂れ、
追手の一人がこの暗い室内にカラダを見せ始めた時、
フラアの背後の光る物体の中から・・・、
白い・・・そして子供のように小さな手が、フラアに向かって伸びてゆく・・・!
もちろん、フラアは背後には無警戒だ!

そしてその手は最後にフラアの首を・・・

 「キャアーッ!?」
その瞬間、フラアはその物体の中に引き摺り込まれた。