Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

態勢決着

 
 「な・・・なんだ、あれは!?」
 「おい! 空を見ろ! つ・・・月が!?」
 「馬鹿を言うな!あんな月がある訳はない!」
 「きゃああああ! 助けてっ! 誰かぁっ!?」

辺りはパニックになり始めた!
誰もこの現象など理解できる筈もない!
兵士・役人・裁判官・法王・国王、
・・・まして先ほどまで気炎を吐いていたディジタリアスまでもが、
口をパクパク開けてその場にペタンと膝をついてしまう。
いや、たった一人、磔のままのフラアだけが・・・この事態を多少なりとも理解しているか・・・。
 「あ・・・あれって・・・まさか ツォン君!?」

そう、そのツォン・シーユゥだ!
光る小型飛行船キントクラウドは、ツォン・シーユゥの頭上で静止する!
当然、その真下の民衆は逃げまどい始めるので、
ツォンの周りには最早、誰もいない!
ゆっくりとツォンの元へ降下するキントクラウドは、着陸と同時に船体のハッチが自動で開閉する。
颯爽とツォンが乗り込むと、
再び、キントクラウドは上昇を始め、金網を越えて刑場の真上に、今度はゆっくりと移動した。
総員、空を見上げ目が釘づけである。

さぁ、おいらの大仕事だ!
ツォンは外部スピーカーをオンにする。

 <ウィグルの子孫たちよ! よぉく聞きやがれぇ!!
 おいらは月の天使シリス様の従者ツォン・シーユー!
 シリス様のご命令により、フラア姉ちゃんを守るため、400年の時を越えてやってきたぁ!
 その姉ちゃんに手を出す奴は、シリス様に逆らう者とみなし、
 このキントクラウドの灼熱の光を浴びせて骨も残らず焼きつくしちまうぞぉぉっ!!>

辺り一帯に響くこの大音響の声にビビらず逆らえる者などいる訳もない。
兵士たちは最初は皆、恐怖で足を一歩も動けぬものばかりだったが、
一人ずつ、この状況が理解できると、
我先にと、フラアやその両親の縄を解くべく、誰の命令も待たずに行動し始めた!
これでようやく、フラアは自由の身へと解放されるのだ。

・・・だが、やはりそれは「遅すぎた」のかもしれない・・・。