Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

収拾

 
ウィグルと言う国家に強い帰属心を持つ者、
またはマグナルナ派として強烈な信仰を抱いている者には、
「キントクラウド」も「ツォン・シーユゥ」も既知の名称だ。
・・・とは言っても当たり前の反応として、
最初にその場の誰もが抱くのは、理解できない現象への驚愕と恐怖!

そしてツォンがパフォーマンスとして、
刑場上空を自由自在に飛び回るのを見るに当たり、
一人、また一人とその眼前の現象と、ウィグル王列伝に伝えられる記述のイメージと一致させてゆく。

 間違いない! これこそ、シリスの下僕として大活躍したたった一つの超高速小型飛行船!

次に彼らが想起するのは、そのキントクラウドが放つ超高温度のレーザーのこと。
ウィグル王列伝には、
第二代国王カラドック退位直前、何が起きたか生々しく記されている。
 ウィグルに反旗を翻した男を・・・
 カラドックの弟にあたる「加藤恵介」を姦計に嵌めた日本人将校を・・・
 そして最後に天使シリスのカラダを、短剣で深々と突き刺した「あの男」を、
怒り狂ったツォンが、一瞬で「消滅させた」記述が残されている。
その武器の詳細は理解できなくても、
この時代の人々も、伝説なった旧世界の武器の恐ろしさに逆らう事など出来はしない。
一度態勢が一変すると、
もうこの場の流れは完全に決まったと言える。

 「・・・よい、私は自力で何とかなる、
 アジジ先生、あなたはすぐに医療関係者を、あ、あの家族の元へ・・・。」
ディジタリアスも我に返ると、すぐさま次の指示を出す。
折角脚光を浴びたわけだが、もはや、群衆の心理に刻みつけられたのは、
ツォンの飛行船と、王族である事が判明したフラアの事だけ。
・・・この状況では、自らの事など確かにどうでもいいことだ、
早く、舞台を収拾させないと・・・。

さすがにここから先は、国王アイザスでも何とかできるだろう。
アイザスは王統府の人間に指示を出す。
この不祥事なる裁判を中止させるべく、
兵隊たちに刑場を片づけさせたり、外の群衆を解散させなければならないからだ。
そして自らは、刑場のディジタリアスの元に駆け寄り、
この国の正統なる後継者である事を示すべく、上空のキントクラウドに向けて手を広げるのである。