Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

シルヴァヌスの森 8

 
距離を取ったのはサルペドンも同様だ。
控えている部下たちを座らせ、自分もマリアの邪魔にならないように、
地面に片膝をついてしゃがみ込む。

さて、マリアは服装を正し、背筋を張る。
しばらく息を整えていると、
左右の掌を胸の前で合わせてお祈りでもするかのような姿勢をとった・・・。
まさに聖母マリアを思い出さずにはいられない。
彼女は祈りの言葉をつぶやくでもなく、
目を瞑り、
少しずつ・・・少しずつ、
心の中の意識を消してゆく・・・。
それは真っ暗な空間の塊・・・、虚ろなる世界へと拡がり、
やがて、その世界は、現実の世界へと重なって行く・・・。
意識が外に広がるのか、それとも外の世界が意識の中に流れ込んでくるのか、
それを分類することはあまり意味をなさない。
結果は同じなのだ、
この感知能力を持つ者が、その技を使うに当たり、どちらの方法が感度をあげることができるか、
それは術者自身のイメージ次第なのだから。

・・・
マリアは「思考」という作業を放棄した・・・。
それは自らが行う能力の障害にしかならない。
彼女の行動は、自らが読み取った物を外にいる者たちに告げるのみ。
 「・・・ここから先、・・・森全体を覆っている・・・。
 とげとげしい・・・悪意を持った意思・・・。
 その中でも・・・スープに浮かぶ具材のように、森の中にいくつかの悪意の塊が・・・。」
傍で控えていたサルペドンは催眠術者のようにマリアを誘導する。
 「私の声が聞こえるか、マリア・・・!
 いくつかの悪意の塊とは何だ?
 その中の一つがシルヴァヌスなのか!?」
 「そこまで、区別は・・・あ?」
 「どうした、マリア?」
 「これは・・・このノイズは・・・な、に・・・?」