Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

バッカスの酒宴 4

 
タケルは一度、思い出したように立ち上がる。
 「タケルさん、どうしたのです?」
 「あ、いや、マリアさん、オレ、みんなの顔を見てくる・・・。」
その時のタケルの表情で、
マリアはタケルの心情を思いやった。
タケル自身が不安に駆られたわけじゃないようだ・・・。
恐らく、他のみんなも不安や怯えを見せてるだろうと思い、
何か元気づけてやろうかとするらしい。
マリアはまるで母親のように、タケルの行動を見守る・・・。
 もともとは死んだ美香がタケルの母親役を務めていた・・・。
そしてスサ内にあっては、美香は指導者であり、全ての隊員達の世話役をも彼女はこなしていた。
信州の地下基地内にいた時は、末端の隊員であろうが、
廊下で会えば、美香は明るい挨拶をする、
その人間の細かな生い立ちや性格も忘れない。
その細やかな気配りに、誰もが美香に尊敬の念を抱いていた。
そんな彼女の行動を、勿論タケルが知っていた筈はない。
恐らくは・・・
美香の性格・・・行動パターン・・・それを常日頃身近に接していたタケルは、
無意識のうちに、ここで何をすべきなのか、
深層心理で学習していたのかもしれない。
やっぱり・・・、タケルも、スサを背負って立つ器を有しているのだろう。

体格や性格は全然違うのに・・・。
改めてマリアは、このいじらしき二人の姉弟に思いを馳せた。
できることなら・・・タケルだけでも・・・。

 「なんだぁ!?」
突然、物思いに耽っていたマリアの思索が破られた。
何事かと、タケルの向かった方を見据えると、
・・・どうもタケルが呆れかえっている。

 どうしたの?