Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

黒衣のデメテル 20

 
 「そなたは自分達の祖・・・
 『紺黒』の髪のポセイドンと、このデメテルの関わり合いを知っておるのか?」
どうやら本当に真面目な話題のようだ。
だが、タケルはスサに入って以来、
ほとんど戦闘の連続で、古来の不確かな伝説の事まで考える余裕などはなかった。
 「あ、え、いや、あんまり・・・。」
デメテルは眉をしかめ、サルペドンをなじり始める。
 「なんじゃ? そなたは仮にもポセイドンの子孫になる者に何も教えてはおらなんだか!?」
言い訳に追われるサルペドン。
 「・・・む、仕方がないんだ、
 地上にはギリシア神話以外にも多くの地域の神話が残っている。
 その中で、どの地域のそれが真実に近いかなどと、
 大勢の学者が集まっても中々結論も出る訳ではないし・・・。」
 「それではそなたは、ポセイドンとデメテルの縁起も信用するに足らぬ、と言うのか?」
 「いや、そう言うわけではないが・・・。」
 「ふん、まぁ、良いわ、
 だが、サルペドンよ、そなたが今までこの少年に教えてこなかったこと・・・、
 それをわらわが話しても問題はないのか?
 もっとも・・・何かを確かめるか、はたまた彼に何かを教えるために、
 このデメテルのテメノスを避けずにやってきたのであろう?」
サルペドンの口が止まる・・・。
肯定も否定もしない・・・
できない・・・というべきなのだろうか?
そしてタケルは今の会話で、さっきのデメテルの問いを思いなおした・・・。
 「この村へ来た理由・・・」?
単純に道なりに来ただけだが・・・、
デュオニュソスの事件後、無用な衝突を避けるために、
大きな集落を避けて行軍すると言う選択肢は確かにあったはずである。
しかし、たまたま村を離れたルートを見つけられなかったとも言えるし、
無理してまで他のルートを取る事もないと思っていた、・・・それだけである。
だが、もし、サルペドンがデメテルの言うように、何らかの目的があって、
敢えて他のルートを選ばないようにしていたというのなら・・・、
一体、この村に・・・デメテル、彼女に何の目的があるのだろうか?

デメテルは、もうサルペドンに用がないと見るや、再びタケルに向き直り、
その目的の内の一つを・・・語り始めた・・・。
そう、その目的はサルペドンが心に留めていたものと同一のものである・・・。
彼が自分の口から語る事の出来ないもの・・・。
それをデメテルに語らせるために、
彼はこの村を暗に目指していたのである。
大地の女神デメテルの元へ・・・。