Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

地母神デメテル 21

 
 「さて・・・何から話そうかの?
 そうじゃな? まず100年以上前にこの地で起こった事件については知っておるのか?」


えーと、確か・・・
誰から聞いたんだっけかな、デュオニュソスかヘルメスか、
オリオン神群の王ゼウスと、それに歯向かう一派の・・・。

 「オレが覚えているのでは、地上の人間を滅ぼすのか否か、
 という問題でゼウスと対抗勢力で一悶着あったとか・・・。」
デメテルはにっこりと微笑む。
体型のせいもあるのだろうが、普通に話すと他人を安心させる笑顔だ。
キャラ的には、母親か学校の先生でも演じたらハマるのではないか?
まぁ、いまはどうでもいいか・・・。
 「そうじゃな・・・。
 あの時、ゼウスに逆らったのは、神々個人の思想と言うよりも、
 それぞれの神の先祖から受け継いできた神々の血筋・・・。
 その遺伝子による影響の方が大きかったのではないかとわらわは思う・・・。
 ゼウスと真っ向から対立したのは、大地の神ポセイドン、
 そしてそのポセイドンを筆頭に、
 このデメテル、デュオニュソス、ヘファイストス、そしてアテナ・・・。
 それらの名だたる神がゼウスの方針に逆らった。
 重い罰を受けた者もいれば、わらわのように軽い謹慎処分で済んだ者もおる。
 首謀者のポセイドンは、重傷を負い、このピュロスから追放された。

 ・・・ふぅ、と言っても今は過去の経緯は置いておこう、
 重要なのは、その神々それぞれが受け継ぐ能力と、その本質・・・。
 デュオニュソスが樹木の育成と人間の本能の解放を象徴するように、
 このデメテルは大地の恵み・・・豊穣を約束する女神である。
 とぉっても古い言葉では・・・、
 『母なる大地 ダー・マーテル』と呼ばれていたそうじゃ・・・。」
いつしか彼女の言葉に聞き入っていたタケルが、デメテルの最後の単語を追うようにつぶやいた。
 「ダー・・・マーテル?」
するとテーブルの向こうでサルペドンの詳細なる説明もついてくる。
 「マーテルはマザーって意味だ。
 簡単に訳すと『母なるダー』と言う事になる。」
ああ、成程、アルファベットにすると分かりやすそうだな・・・。
 「ん? じゃあダーって?」
 「今では大地を意味する単語としかわかっていない。
 ・・・そういえばデメテルよ、このピュロスで穀物の播種量を表す単位は・・・。」
何故かデメテルは勝ち誇ったように笑う。
 「ダーじゃ!」
そのまますぐに、彼女は話題を戻すつもりのようだ。
 「そして・・・その『ダー』の名を冠する神がもう一人おる・・・!」