Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

守護女神アテナ 6

 
デメテルは遠くでタケルが怯えるのを、
笑いながら見ていたが、
すぐに思い直したように、カラダをテーブルの正面に戻す。
すると、そのタイミングを待っていたかのように、
彼女の背後から、黒い簡素な長衣をまとった男が控えめに歩み寄ってきた・・・。
デメテルは前を向いたまま、自分の背後に現れた男に質問をする。
 「何じゃ、お前は?
 この村のものではないな?
 アテナの神の奴隷でもあるまい?」
男はデメテルにしか聞こえないような小声で要件を告げる。
 「・・・恐れながら、黒衣の女神デメテル様・・・!
 私は戦神アレスの配下アクタイオス!
 野蛮なる地上の人間どもを殲滅させる為に、
 我らが主が『嘆きの谷』にて1,000の兵を揃えて、待機しております。
 ・・・貴女様の承認さえ頂けましたら、
 この村に一切の被害を与えずに奴らを皆殺しにしてみせましょう・・・!」

デメテルはすぐに答えず、ゆっくりとテーブルのグラスワインを口に含む・・・。
男も静かに彼女の返答を待っている・・・。
やがて、彼女はゆっくりと態勢を変え、その男の顔を見下ろした。
 「・・・見て分からぬか?
 わらわは『客人』を歓待中なのじゃぞ?」
 「ご安心を、デメテル様に手間は取らせません、 
 全て我らの手でケリを付けます故・・・。」
 「いい加減にせよ。わらわはこの村の大地を血で染めるつもりはない。
 地上の人間たちを討ち取りたいのなら、そのまま『嘆きの谷』で待っていればよいであろう?」
 「この村で身を隠していた方が、簡単に勝負を決することができるのです。
 ・・・それに何よりデメテル様、
 ここで主に協力されれば、後々ゼウス様の貴女に対する覚えもめでたく・・・」
その時、男の声は遮られた・・・。
何かに邪魔されたわけではない、
話をしていた筈のデメテルの形相が、
みるみる内に氷のように冷たい表情に変わって行ったからだ・・・。
 「・・・二度も同じことを言わせるつもりか、アレスの下僕よ・・・?」
 「ハ・・・ヒッ! ヒェッ・・・!」
 「わらわの能力を知らぬなら教えてやろうぞ・・・?
 そなたの体内に紛れ込んでいる病原性の微生物や細菌を繁殖させ、
 体中の穴と言う穴から、腐った体液を噴出させてみようか?
 それとも、出血性ウィルスを増殖させ、眼球を内側から破裂させてみたいのか!?」