Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」21

 
バリバリバリ・・・!

突然、「男」の右腕に握られていた剣からも変化が生じる。
白い霧の世界に再び青白い光が迸り始めた。
・・・だが、先ほどと違う事は、
その放電が、持ち主の意志によって生まれたものではなく、
むしろ器物の拒否反応としての現象である事だ。
天叢雲剣が「男」を持ち主と認めず、
蓄積していた霊的エネルギーを逆流させて抵抗を始めたのだ!
「緒沢タケル」だった筈の男は、自らの右腕に黄金色の目を落とす。
放電はどんどん激しくなり、
ついには男のカラダを蝕み、右腕からは肉を焦がすような匂いと、白い蒸気が立ちあがり始める。

タナトスは何もできず、呆気に取られるばかりだ。
たちまち「男」は電撃の大群に蹂躙されていくが、
当の本人は涼しい顔のまま・・・、
いや、笑っているのではないだろうか!?
その内「彼」は右腕をかざすと、
まるで獣の様な雄たけびを上げた・・・!
耳を塞ぎたくなるような咆哮が地底世界を満たす。

・・・放電はピタリと止んだ・・・。
「男」は自力で天叢雲剣を抑え込んだとでも言うのだろうか・・・。
しばらく「男」はニヤついたまま、剣を見ていたが、
やがて興味がなくなると、その辺の地面に無造作に放り投げた。
・・・そして「男」の視線はタナトスに・・・。

いつの間にか地震は止んでいた・・・。
巨大な精神波動の嵐も今は落ち着いている・・・。
一体、今、何がこの場に起きているのか?
さっぱり事態が掴めないタナトスにも、分かっている事が一つだけ・・・。
それは今、目の前にいる男が、自分の命を脅かす存在であると言う事・・・。
ならば、
今度こそ息の根を止めねばならない!
この男が何者か、そんなものはどうでもいい!
この「男」は危険だ!
自分にとってもオリオン神群にとっても!