Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ヘファイストスの葛藤・語り継ぐネレウス40

 
村の広場では酒田のおっさんたちが待ちかねていた。
テーブルの上のグラスやお皿を見るからに、立派な歓待を受けていたようだ。
まぁそれはいいか。
おかしな様子も見えないし、何か変な姦計や罠にはめられている心配はなさそうである。
 「酒田さん、そっちも無事かい?」
 「おお、楽しい話は聞けたかぁ?
 後で聞かせてくれや。
 それより・・・奴さん、あちらでスタンバってるぜ?」
その言葉にタケルの心は戦闘モードに切り替わる。
酒田さんの視線の先・・・。
パキヤ村の人々が固まっているあの小高い丘・・・
壮麗な大神殿の麓に・・・あれは・・・?

一人だけ輿に乗った・・・、
いや、違うな、誰もそれを支えていない・・・。
あれは車椅子・・・よりも格段に大きい古代の戦車!?
そうだ、世界史の教科書に絵が載っているような、武装した戦車のイメージだ。
だが、戦車というのは普通、馬が牽いている物では?
最初に車椅子と勘違いしたのは当然だ。
誰もその戦車を牽いていないし、牽く様子もない。
まさか本当に車椅子のように本人が動かすのだろうか?

初っ端から、戸惑うタケルを他所に、
サルペドンはその固まっている一団の元へと歩いてゆく・・・、
かつての自分の居城の下へ・・・。
 ほとんど景色は変わってないか・・・?
 いや、あんな柱だったっけか、
 むしろ記憶と合致してない部分も多そうだ、
 いや、いまは感傷に浸っている場合ではない。

すぐにサルペドンは、視線をヘファイストスにあわせ、彼に向かって近づいていく。
異邦人の襲来に備える為、周りの護衛の者が槍を構えるのは当然だ。
サルペドンは護衛兵の挙動を確認して、少し遠い位置からヘファイストスに対峙する。