Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ヘファイストスの葛藤・語り継ぐネレウス41

 
一人、武装して戦車に乗った風采のあがらぬ男、この男がヘファイストスか。
 「ヘファイストス殿とお見受けする。
 私は地上より来たスサの副司令官カール・サルペドン。
 向こうにいる剣を携えた者が緒沢タケル、
 もしあなたと戦いになるのなら、彼が戦闘を行うことになるのだが、
 どうか、互いに血を見ないで済む方法を考えてはいただけないだろうか?
 我等は、争いごとを好まない。」
それを聞いて護衛の者は安堵に心を撫で下ろすも、
いかつい顔したヘファイストスの表情は変わらない。
 「血を見ないで済む方法?
 ならば、何ゆえわざわざ大地の底に下りてきた?
 自らの安住の地でおとなしくしていれば良いではないか、良いだろう?」
 「もとよりそのつもりです。
 このピュロスの主ゼウスが、地上に一切干渉しないと言うなら、
 何も争いにはならないのです。
 もし、・・・仮にもし、ゼウスの考えが変わると言うのなら、
 これ以上、誰も傷つきはしないのです。」
 「フン? フンフフフン?
 今更何を言う? 何を言っている?
 地上で、何百年も何千年も戦争を続けてきた人間たちが何を言う?
 自分たちの欲を満たすがために、他人の土地に入り込み、
 大勢の命を奪ってきたのだろう? そうだろう?
 そんなお前さんたちの言葉が、わしらに通じると思うのかね?
 え? 思うのかな?」
「それは・・・」と言いかけてサルペドンは言葉を選ぶ。
反論はいくらでもできる・・・。
だが、その言葉は他のオリオン神群に向けるべきもので、
ヘファイストスには他に言わねばならないことがある。
 「仰るとおりです・・・。
 それゆえ我らにできることは、少しでも争いを止めさせる事・・・。
 権力を持つ者によって、力なきものが非道なる目に遭うのであれば、
 その強い権力者の目を覚まさねばならない。
 あなたの先代、ヘファイストスもそう考えていたはず・・・。」