Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ヘファイストスの葛藤・語り継ぐネレウス52

 
 あああああ、あの馬鹿ぁっ!
心底呆れたのはミィナたちだ。
ところが、
実を言うとヘファイストスも同じ思考レベルのようだったらしい。
 「そ、その手があったかっ!」
慌てて手近に屹立している他の槍に、今頃左手の炎を浴びせてゆく。
自分の作戦を全く煮詰めていなかったようだ、
頭がいいんだか悪いんだかわからない。

どちらにしろ、タケルはもはや地面の槍を引っこ抜くことは考えないようだ。
他の手を・・・。
このままでは逃げ回るしかできなくなる。
こうしてみると、ヘファイストスの戦車に備え付けている小型槍も忌々しい。
あれは敵を貫くというより、タケルを接近させない為に効果的なのだ。
グルグル向きを変えるヘファイストスの戦車は、危なっかしくて迂闊に接近できない。
何しろ戦車の角度以外にも、
ヘファイストスの右腕の槍、
そして左腕の火柱、全てを警戒せねばならないのだ。

いいや・・・、そのタケルの判断は甘すぎた・・・。
もう一つ警戒すべき物が抜け落ちている・・・。
   ドンッ!
 「あっ!?」
タケルの動きが止められた!
背中に障害物・・・。
ヘファイストスの投擲自体は無造作に投げつけてるだけだったのだが、
戦車の巧みな操縦で、
タケルの気づかぬうちに、その背後に槍の柱を背負うように誘導していたのだ!
 「食らえ食らえっー!!」
ヘファイストスは嬉しそうにブンブン槍を振り回したっ!

その場の全員が最悪の事態を予想した・・・が。
間一髪、凄まじい反射神経と運動能力でヘファイストスの槍の一撃だけはかわす・・・。
しかし、その代償が・・・。