Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

クラトスとビア 3

 
動物の匂いを嗅ぎつけたのはグログロンガ、
そしてその発見を知らせる声は、当然、先頭のタケルたちの耳にも入ってきた。
 「獣!? ・・・そういや・・・この匂い、
 番犬かっ!?」
門の向こうに注意を向けると、確かに匂いのほかにも、
ジャラジャラと複数のものと思われる鎖の音や、
ビッタビッタと、規則的な音も聞こえてくる。
それに・・・。
 ヴーッ ヴーッ・・・
獣の呼吸音か・・・。
猟犬か闘犬のような・・・、いや、犬にしては声と思しき音がやけに高いところから・・・。
その呼吸音すら犬のものとも思えない。
では!?

その時、ゴゴン!という重低音が辺り一体に響き渡った。
どう考えても、眼前の門の向こうから聞こえてくるものだ。
・・・どうやら閂でも外したのだろうか?
緊張するタケルたちのカラダに力が入る。
 「マリアさんたちは後ろに!
 グログロンガ! 酒田さんはオレの後ろに控えていてくれ!」
後ろといっても、タケルの背後左右だ。
巨石の門に対し、タケルを頂点に三角形のような布陣で門が開けられるのを待つ。
・・・いや、タケルの後ろにサルペドンも歩み寄る。
布陣は菱形と、いうべきだろうか。

さぁ、鬼が出るか蛇が出るか、
いきなり弓矢の嵐が放たれるかもしれない。
大勢の兵が雪崩れうつか、
それとも・・・。

タケルたちは目を見張る・・・!
やはり獣か・・・!
観音開きの石の門がゆっくりと、その奥の景色を露にするかと思いきや、
そこにあったのは、真っ黒い体毛に覆われた、あまりにも巨大な猛犬であった。