妖しき歓待者 2
さてさて、
こちらは王都ピュロスのゼウス神殿。
少年神ヘルメスの報告を受けたゼウスの機嫌は、周りの者全ての神経を過敏にさせていた。
自らの右腕たるハデスを破られて、
確実に自分が腰をあげねばならない状況に、イラついていたのである。
今回、その鬱憤の発散相手には、
一人の女神が犠牲になる・・・。
「未来を見通すモイラよ・・・!」
盲目の三姉妹の長姉、長い髪を振り乱しながらゼウスの言葉にビクビクしている。
「ハ、ハハッ・・・!?」
「以前、そなたは予言しておったな?
地上からやってきたアトランティスの子孫とやらは、
一人を除いて死に絶えると・・・。」
「は・・・はい、確かに・・・。」
「だが、ハデスが倒れ、
報告では未だ30人近くの生き残りがこちらに向かっているというではないか?
慈悲深い私は、何も彼らを皆殺しにしようなどとは考えていなかった。
奴隷とでも飼いならしておけばいいと思っていたのだよ?
まぁ、ポセイドンには然るべき刑が必要だが・・・な。」
「は、ハイ・・・。」
「ハイではないだろう?
どういうことだ? 私が自ら彼らを処刑せよとでも言うことか?
それとも、そなたの予言は私へのご機嫌取りだったのか?」
哀れなモイラ・・・。
彼女は自分が見たことをそのまま伝えていただけなのに・・・。
しかし、盲目の身分の低い女神といえど、彼女も必死に自分の正確さをアピールする。
自分たちの存在意義を揺らがせてはならない。
「お、恐れ多くも我らが主、ゼウスよ、
お言葉ですが、私めの視たもの・・・それにいささかも変化はありません、
いま、この時にあっても、私に視えるもの、
それは、アトランティスにあって、たった一人の生き残りだけなのです・・・!」