Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

妖しき歓待者 12

 
神殿の中の大きな廊下には、左右に立派な燭台が掛けられている。
薄暗いとは言え、移動や仲間と会話するのに不自由はない。
恐らくだが、玉座か広間まで行けば、吹き抜けの構造になっているはずだし、
上部から光が差し込むはずだ。
猫背の男は「迷うことはない」とは言ったが、神殿の外観の形状から察するに、
そこに辿り着くまで、いまだ距離があるのだろう。
後方から早足でサルペドンが追いついてきた。
 「みんな、だれか神殿の人間を見ないか!?」
 「おっ、どうした、サルペドン?」
そこでさっきの猫背の男の顛末を告げるも、
タケル達にしたところで、まだこの神殿に入って誰も見ていない。
 「なんで誰もいねーんだぁ?
 人の気配自体、感じねーぞ?」
とは言え生活感はある。
廊下は掃き清められて、くもの巣一つ見受けられない。
燭台の手入れも行き届いている。
・・・まるで、急に人が出て行ったような・・・。

そのうち、神殿内部の構造に変化が訪れた。
左右は壁ではなく、・・・というより歩いている道が橋のようになり、
左右には大きな石柱が地下階層から天井までも伸びている姿がわかるようになった。
燭台はその柱ごとに掛かっているが、一応外からの光もわずかに入ってくる。
ミィナが柱と柱の隙間から下を覗く。
 「やっほーっ!!」
慌てる一同、特にタケル。
 「ミィナ、てめぇ何、大声出してんだ! 失礼だろぅがっ!?」
 「ええええっ、だって誰もいないじゃーんっ!?」
それはその通りだが、いたらどうする!
アグレイアが気難しい婆さんだったらどうする気だっ!
思わずゲンコツ食らわしてやろうかとも思ったが、
また反撃を食らいたくないので、タケルはヘタれた。
とりあえずはまず会見までこぎつけてからだ。