Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

妖しき歓待者 11

 
すると、
初めてこの猫背の男の顔は明るくなったような印象を受ける。
 「さ、さようでございますか!?
 これはご無礼を・・・!!」
 「気にすることはない、
 私はもはや、この地で何の権力も持たない。
 普通に客人として扱ってくれればいい。」
だが、男はさらにサルペドンを引き止める。
 「あ、は、あの、・・・その・・・。」
 「? まだ何かあるのか?
 私としても早く、女神アグレイアに挨拶しておきたい気持ちがあるのだが。」
 「ああ、すいません、
 そ、そのアグレイア様ですが・・・。」
やはり様子がおかしい、・・・女神アグレイアに何かあったのか?
 「どうした?」
次の瞬間、サルペドンは異様な光景を目撃する。
 「じ・・・実は、女神は・・・」
ブッ!
 「!?」
突然、猫背の男の鼻から赤い鮮血が滴り落ちたっ!
それもドバドバとっ!
 「おい! どうしたっ!?」
 「ハッ? ・・・ラ、らいじょーぶれすっ! こ、これは、すぐに・・・っ!」
そのまま猫背の男はへたりこんでしまった。
最初から具合でも悪かったのだろうか?
サルペドンは一度、先に神殿に入った者たちに聞こえるよう、
大声で怒鳴ってから、簡単に猫背の男を介抱した。
 「頭を上げるな、呼吸はできるか? そうそう、顎を上げて、横になれ・・・。」
 「な、なんと怖れ多い・・・、わ、わらくしめに・・・。」
 「いいから喋るな、中に入って誰か呼んで来る。
 それまで休んでいろ・・・。」
立ち上がるサルペドンは、後ろ髪を引かれる印象を持った。
・・・猫背の男が自分を見る目は・・・、
何かを訴えるような・・・懇願するような・・・。
だが、すべきことは決まっている。
サルペドンもまた、先頭のタケルたちより少し遅れて、
このアグレイア神殿に足を踏み入れたのである。