ゼウス対ポセイドン 6
この場にオリオン神群はいないようである。
純粋に、王都を守る兵隊として、タケル達に攻撃を加えようというのか。
ならばこちらにも覚悟があるが、
まずはサルペドンが交渉にあたる。
「ピュロスを守る兵たちよ、
私はかつてこの地にあったオリオン神群が一人、ポセイドン!
そなたたちは、我らをピュロスにいれないよう指示を受けているのか?
だが我らは、まずこの地の支配者ゼウスと今一度、話し合いをしたい、
どうか道を開け、ゼウスに伝令を飛ばしてもらえないだろうか?」
すると、兵たちの責任者と思しき、一際重厚な鎧を纏っている者が、
ゆっくりとサルペドンの前に現れた。
「我が名は、この地の将が一人、アンピメデス・・・。
かつての神々の一人、ポセイドン様に謹んでお答えいたしましょう。
我々が受けている指示は、あなた方をピュロスにいれず、
街の外にございます荒地にご案内せよとの事です。
無論、・・・そこにはゼウス様直々にあなた方とお会いすることになるでしょう。
その場で話し合いをなされてはいかがですかな?」
なるほど、
ハデスと同じく、街中で争うつもりはないというわけか。
それは当然だろう。
ハデスとタケルの戦いでさえ、街中を避けたぐらいだ。
共に破壊の権化とも言うべき、最強能力者二人がぶつかりあうのに街中に入れて良い訳がない。
もっとも、はじめから戦場に赴くのであれば、
話し合いのペースに誘導することは困難だ。
できれば、一度、テーブルにつきたいものだ。
「ピュロスを守りしアンピメデスよ、
そなたの立場は理解できるが、せめて一度、ゼウスに伝令を飛ばしてもらいたいのだ。
我々は、これ以上・・・誰の血も見たくない。
仲間は勿論、かつての同胞・・・そしてキミ達も、だ!」
サルペドンはサングラスを外して、醜い傷跡をアンピメデスに曝け出した。
サルペドンの言葉には、懇願と誠実さと・・・そしてわずかながらの脅しが含まれている。
生死と隣り合わせに生きているものなら、誰でも感じることが出来るだろう。
アンピメデスは臆病に身を竦ませる人物ではないが、
この場でのサルペドンの覚悟が本物であることは疑うこともなかった。