Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

地獄の扉が開く時 8

 
サルペドン達の反応を確かめつつ、末席のモイラは話を続ける。
 「その猛き刃はあまりにも圧倒的でした・・・。
 地上のいかなる軍隊も、彼らの歯牙に打ち砕かれ、
 その軍勢はあっという間に地上を飲み込んでしまったのです・・・。
 私には視えました・・・。
 あなた方と戦った騎士団のうち、
 二つの剣を同時に振るう者が立ち向かいましたが、
 彼らにその剣は届くことも無く・・・。」
誰だ!?
タケルの記憶にある騎士団の者と合致する人物がいないが、
それはマリアがフォローした。
 「二つの剣・・・、
 恐らくはアフリカ方面を担当していた双剣の騎士ベリンでしょう、
 私たちとは戦ってはいなかったはずです。」
自分の見知った人物でないのは、幾分ほっとしたタケルだが、
安心など出来はしない。
今、聞いているのは過去に過ぎ去った事件・・・、
現在・・・そしてこれより、どうなっているのか全く予測も出来ないからだ。
アーサーや、そしてランスロット・・・
ガラハッドや李袞も・・・、果たして彼らは今も無事なのか?
さしものサルペドンも動揺を隠せない。
なんとか話の詳細を掴もうとするので精一杯だ。
 「モイラよ、それは一体如何なる集団なのだ?
 あれだけの混乱の中で、そこまで強力な軍隊を残していた物など、
 私たちの予想も出来ない。
 いったい・・・。」
末妹のモイラは、一度、サルペドンの顔を向いた後、
静かに・・・、
ためらいがちに一言、口を開けた・・・。
 「私めに見えたのは・・・無機質な鉄の塊に浮かぶ黒い十字架・・・。」

その反応はマリアが最も早かった・・・。
 「黒い十字架・・・まさか、ドイツの傭兵部隊黒十字団っ!?」