Lady メリー第二章 第六話
神父は途端に身を翻し、奥へと戻っていったと思ったら、
すぐに外套と懐中電灯を用意して、再び姿を現した。
「あなたは新聞記者か何かですか?」
神父は私の身体を追い越し、慌ただしく靴を履き、表に出ようとしている。
容易ならざる事態が起きている事は、私にも感じられた。
「あ、わ、私はルポライターです。」
ごまかすつもりだったが、そんな空気ではない。
神父は表に出る前に一度振り返る。
「マスコミに話す事はありません・・・、と言いたいのですが、手伝って下さいませんか?
もしかすると・・・。」
私の返答を待たず、神父は表へ飛び出した。
神父は車の所まで行き、ライトを照らす。
すぐに私も追いつき、ライトに照らされた車内を覗いてみた。
「あれ? 運転席に 封筒が・・・ ! 『遺書』!?」
神父は私の顔を見た後、車のドアを開けようと試みた。
・・・ロックされてはいない、
ドアを開けた神父は遺書を手に取る。
「こ、こちらの神父様・・・ですよね?
あ、あの夫婦がここを出られたのはいつ頃なんですか?」
私の慌てた質問に、神父はすぐには答えない。
遺書に封はしていなかった。
私は肩越しに、ライトで照らされた遺書の一部を読む。
細かい事は書いていないようだ。
「○○様(神父の名?)」に最後まで迷惑をかけたこと、
愛する一人娘を失った事への絶望、加害者とその祖父への恨みが書かれていた。
・・・そして
『・・・主のお教えに背くかもしれません、
ですが私達夫婦にはこれしか道がないのです。
愛する娘の苦痛を少しでも和らげるために、私達の命と恨みの情念を・・・
あの人形メリーの糧として奉げようと思います・・・ どうか・・・』
内容を把握できたのはそこまでだった。
神父は書面を封に戻し、こちらを振り返る。
「彼らが出たのは一時間前です・・・。」
その後すぐに、神父は近所の扉を叩き、私は警察に連絡をとった。
その間、遺書に書かれてた部分が、私の頭からどうしても離れない・・・。
人形・・・メリー メリーさん・・・?
近隣住民総出での捜索の結果、・・・彼らの行方の手がかりが見つかった。
教会のすぐ先の街道沿いに大き目の橋があり、
そこに、夫婦の靴が揃えて並べられていたのである。
そして事件は、一家全員死亡という最悪の結果を迎えてしまった。
教会のすぐ先の街道沿いに大き目の橋があり、
そこに、夫婦の靴が揃えて並べられていたのである。
そして事件は、一家全員死亡という最悪の結果を迎えてしまった。