Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリー第二章 第十一話

 「しかし、その老人の魔力を持ってしても、少女への呪いは解けません。
 呪いをかけた本人でなければ、その呪いを解くことはおろか、
 人形を動かす事すらできなかったのです。
 ある時彼は、近くで非業の死を遂げた者がいると、
 少女の人形がひどく反応する事に気づきました。
 老人は人形に『死神の鎌』を与えてみました。
 それは彼が直接、死者の王に授かった物だと言われています。
 するとどうでしょう、 人形は立ち上がり、動き始めたのです。
 以来、彼女は、死にゆく者の恐怖や怨念を感じると、まるで自らの恨みを晴らすかのように、
 その不気味な鎌を振るい、非道な犯罪者達の命を狩るようになったのです・・・。」

 「その人形が・・・メリー?」
 「少女の名前は本来、別の名前であったようです。
 別の民話が混ざったのか、老人が新たに名前をつけたのかは分りません。
 ただ、私がこの教会に赴任した時には、
 既にここの住人の間では、『メリー』として定着していたようです。」
 「それはつまり、恨みのある相手を・・・人形が報復してくれる、と信じられている・・・と?」
神父の顔は残念そうな表情を見せていた。
 「お分かりでしょう、主の教えと相容れる訳がない。
 この教会ではその話はタブーだったんです。 
 かつて、人形による殺人事件が起きていたとしても・・・。」
 「何ですって!? 」 私は驚愕した。
それはそうだ、今までの話は、全て外国の伝説だと思っていたからだ。
神父はため息をつく。
 「先代の館長の頃の話です、村で何人もの少年が殺されるという事件がありました。 
 犯人は性的倒錯者のようでしたが、当初、捜査は難航しました。
 そんなある日の晩、村の青年が、
 大きな鎌を持った人形が路地を走り去ってゆく姿を目撃しました。
 青年は腰を抜かしてしまいましたが、
 近くを通った駐在に助けられ、人形のやってきた道を辿ります。
 すると、一軒の小屋がありました。
 中をのぞくと、カラダをバラバラにされた男の死体があったのです。 
 村で変わり者とされてた男の死体でしたが、よく調べると、
 その小屋から、以前に殺された少年達の遺品が見つかったのです。
 以来、それはメリーの報復だという噂が、村人達の間にあっという間に拡がったのです。」