Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリー第二章 第十三話

 「被害届けを出すかどうか悩んでいた少女が死んだ・・・
 既に被害届けを出していた他の女の子達はどう思ったのかな・・・。」
若い刑事は独り言のようにつぶやいた。
 「まさか、脅迫・・・その為の材料にするためにあの子を・・・。」 
自分の体が震えているのがわかった。
・・・止められそうにない。
 「和解を申し出ていた弁護士以外に、
 彼女達に何らかの接触をした者がいるんじゃないか、
 と思って調べてたら、ここの責任者に行き着いたんだけど・・・、
 死体になっちゃこれ以上は無理かな・・・。」
 「これ以上は捜査できないと・・・!?」
 「監禁事件は終了、自殺・心中事件もこれ以上捜査の必要なし、
 と上が判断すればそうなるでしょうね。
 こっちの事件は確実に殺人だから、むしろ、こっちに力を入れる事になるだろう。
 死体の損壊程度から言って、中国マフィアが絡んでるかもしれない。」
私は我慢ができなくなって叫んだ! 
 「では、自殺に見せかけられた少女の真犯人は捕まえられないッ!
 指示をした警察OBには手出しできないと、言うのですか!?」
刑事は眉をしかめ、別れ際にこうつぶやいて、私から離れた。
 「だから何度も言ったでしょう・・・我々は証拠がなければ動けないんです・・・。」

私はもはやジャーナリストとしてより、一人の親としての想いが自分を動かしてたように思う。
心中した家族が自分の家庭に重なり、また今朝、神父から聞いた、天国にも行けない少女の話、
永遠の苦しみを味わう悲しい話を、この痛ましい事件に重ね合わせていた。
もしも麻衣が同じような目に遭うとしたら・・・、
私には麻衣の怖がる姿すら、とても想像できない・・・。
誰も助けに来てくれない、逃げる事もできない永遠の絶望・・・。
あの家族の尊厳を守り、少しでも恨みを晴らしてやりたい、
できうる限りのことを調べてマスコミに公表する。それが私のなすべきことだ。
この時私は、この建設現場の三人は・・・、
彼らが何か知っていて(もしかしたら、彼女を自殺に見せかけて殺した実行犯かも)、
口封じの為に殺されたのではないか、という可能性を考えていた。
妻の「無理はしないでね」という、電話の声も頭に残る。
だが、私は車を走らせるしかなかった、
県議会議員の自宅に向けて・・・。