Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリー第二章 第二十話

私の頭上を巨大な何かがかすめ飛んだ!
それは人形に激突して「彼女」は弾き飛ばされる。
かろうじて後ろを振り返ると、丸山がいた。
丸山が投げたのは、和室にあった巨大な壺のようだ。
大音響と共に「人形」は床に倒れる。
丸山はラグビーか柔道をやっていたのか、すぐさま「人形」に突進し、
アラベスク文様のある鎌を蹴り飛ばした。
武器がなければ、どう考えても人形に勝ち目はない。
・・・だがそれは私や丸山の思い違いだった。
丸山は馬乗りになって、石膏で覆われた人形を殴りつけていた。
しかし、考えれば当然なのだが、殴ったところで人形にダメージはない・・・。
そのうち人形は細い腕を丸山の首に延ばし、彼の首を押さえ始めた。
彼も殴るのを止め腕を押さえにかかったのだが、みるみる顔が青ざめ紫色になっていく。
あの細い人形のほうが力が強いというのか!?
私は耳を疑った・・・このとき、人形ははっきりとしゃべったのだ。

 「わたし・・・メリー、
 抵抗すら 許されず
 吊るされた 少女に 安らぎを 」

 「うおぉ!」 
丸山は必死に人形ごと立ち上がり、首を絞められたまま人形を壁に叩き付けた!
その衝撃で指が離れたようだ、
間髪入れず丸山は人形の身体を逆さに持ち上げ、頭からまっ逆さまに廊下に叩き付けた!
決定的な鈍い音が廊下に響く・・・。
彼はむせりながら、なおも人形の身体をけり続けた。
既に人形の首は、支柱が折れたのか、変な角度に折れ曲がったままだ、
人間ならとうに死亡しているだろう。
丸山はそのうち蹴るのを止め、その大きい肩で息をしながら、人形を黙って見据えていた。
だが、もう人形はピクリとも動かない・・・。
私は、ようやく口を開けることができるようになっていた。
 「ま、丸山・・・さん、あなたが・・・あの子の殺害を・・・?」
丸山は私のほうを見たが、咳き込むだけで何も答えなかった。
 プーッ 
内線が鳴った。
丸山は、人形に、もはや何の反応もないことを確かめると、
ゆっくりとわたしを通り越し、広間の向こうの受話器に向かう。
そこまで、彼の動きを目で追った後、
私は再び「人形」を見ようとして、信じられない光景を見た。

   そこには 人形も 鎌も 残っては いなかったのである。

 『 私 メリー 今 あなたの 真上に  いるの 』