Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリー最終章 第七十六話

 「な・・・、それって・・・まさか・・・!?」
 「彼女達がそうじゃ・・・。
 かつてエデンにおいて、ヴォーダンから「生命の実」を食べた一族・・・、
 バァルも言ってたじゃろう、『リーリト』・・・。
 それが彼女達じゃ。
 長い寿命を持ち、時にはイヴの子孫にはない能力を有する・・・、
 そしてその代わり、イヴの子孫のように複雑な『心』は持たないし、繁殖力もない。
 かつてはお前さんたちに、『魔女』のレッテルを貼られ多くの先祖が火あぶりにされた・・・。
 イヴの子孫との溝は深く、子供を生む時には男に近づいて自らの子孫を残し、
 必要がなくなれば、夫といえども殺していくようになったのじゃ・・・。
 ・・・わかるか!?
 いずれ、今度の事件がなくともいつか、
 この奥さんは旦那を殺さなくてはならなかったんじゃ・・・。
 それが一族の掟・・・。
 彼女が『人形』に転生したのは、自分が愛する夫を殺さなくてもいいように・・・!
 一族を裏切る事も、
 愛する者を見捨てる事もできない彼女が選んだ唯一の選択だったんじゃ・・・!」
伊藤の呼吸が荒くなる・・・。
レッスルの説明なんかはどうでもいい・・・!
話よりも事実そのものを受け止める事ができない。
潤んだ目からは涙がこぼれ始めた・・・。
再び力なく「百合子」を振り返る・・・。
 「・・・うそだろ・・・? 冗談なんだろ・・・? なぁぁ おい・・・。」
 「・・・あなた、愛しているわ・・・。」
そう言って「百合子」は、その人形の頭を伊藤の肩に乗せる・・・。
そのまま銀色の髪は、伊藤の背中や胸に静かに垂れた。
レッスルは話を続ける。
 「・・・既に奥さんには『感情』が芽生えていた・・・。
 生まれた時からか、
 伊藤さん、アンタと出会ってから覚えたものかは分らんが・・・、
 これは避けられん運命だったんじゃ。」