Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリー最終章 第七十八話

人形、百合子はカラダを離した。
・・・黙って夫や麻衣を見つめる。
 「泣かないで、麻衣・・・あなた。」 
そうは言っても涙をとどめる事ができない。
 「・・・もう、行かないと。」
 「行くな! 百合子、人形だって一緒に暮らせばいいじゃないか!
 今までと・・・、今までどおりには行かないかもしれないが、三人で一緒に・・・!」
人形は首を振る。
 「元々、わたしには感情はないはずなの、寿命だってあなたの数倍は生きるわ・・・。
 何も気にする事はないの・・・。
 わたしにしてみれば、本来の運命を歩むのと、大して違いはないわ・・・。
 お母さんと同様、一定の年齢になったらみんなの前から姿も消さなきゃならない・・・。
 少し早くなっただけよ。
 それにこのカラダは、やっぱり他人の感情を吸い取って動くみたい。
 今は惰性で動いているけども・・・。
 これからは今までのメリーと同様に・・・この鎌を振り続ける事でしょう・・・。」
だが、伊藤は彼女のカラダを放さない。
人形の百合子はちょっと困ったような首のかしげ方をする。
 「あなた。」
 「・・・何だい、百合子・・・。」
 「お願いがあるの・・・。」
 「・・・何でも言ってくれ。」
 「レッスル様。」 そう言って百合子は顔を老人に向けた。
レッスルはうなずき、みんなを促す。
 「もう、ここには用なかろう、こっちへ来てくれ・・・!」
全員、ゆっくりとその場を離れる・・・伊藤と麻衣は、百合子のカラダを放さない。
しばらく歩くと、間道を抜け、崖のようになっているところまで戻ってきた。
そこには毛布にくるまれた、一人の女性のカラダがあった・・・。
 「あれは! えっ、ゆ、百合子・・・!?」