Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリー最終章 第七十九話

人形は優しくつぶやく。
 「あなた・・・、麻衣、・・・行ってあげて。」
伊藤は何が何だか分らず、本来の妻であるはずのカラダの元に向かった・・・。
息がある・・・?
生きてる・・・? これは!?
 二人の父娘は、百合子のカラダであるはずの上体を揺する。
 「 ・・・ん、んん・・・!」
 「ど、どうなってるのぉ!?」 マーゴでなくとも全員わけが分らない。
この疑問には、レッスルが穏やかに答えた・・・。
 「人形に込められた魂を吸い出すことはできない・・・、
 じゃが、人形の内側からなら、その魂を追い出す事ができたよ・・・。」
 「ええぇ!?」
人形の百合子がつぶやいた。
 「イヴの子孫とおんなじカラダに住み着くなんて、まっぴらごめんだもの・・・。」
かつての百合子は目を開いた。
キョロキョロ辺りを見回すが、何がどうなってるのか分らないようだ。
伊藤の顔を見て、きょとんとしていたが、しばらくしてゆっくり腕を延ばす。
何かを差し出すかのように・・・。
・・・この動作には・・・覚えがある・・・。
あの時とは、
・・・六年前の屋敷での時とは逆に、今度は伊藤が後からその指に自分の指を重ねる。
洞窟の中で指は冷たくなっているが、あの時のように固くはない。
目の前の伊藤と麻衣を、不思議そうに見つめて口を開く。

 「・・・? 手袋のおじさん? 麻衣ちゃん・・・!?」
そこにいたのは、今まで長い間メリーに封じ込められていた女の子の魂であった。
レッスルと百合子は、お互いの魔力を使って、魂を交換する術に成功していたのである。