Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリー最終章 第八十話

彼らの背後から、人形の百合子が声をかけた・・・。
 「あなた、麻衣、新しい家族をよろしくね・・・。」
伊藤の目には再び涙が溢れてきた。
悲しい現実はどうしょうもない。
だが、遠い過去からの悲劇は、この場で終結を迎えるのだ。
可哀想な女の子の物語は、いま、ここで解放されたのだ。
伊藤は顔をくしゃくしゃにしながら、これ以上ないという笑いを顔に浮かべる。
麻衣も泣きながら喜んでる。
やっぱり親子だ・・・。
そして百合子の人形は、満足そうに後ろを向いた。
 「百合子! 待って!」
 「ママーァ! 行っちゃやだぁ!!」
百合子は一瞬足を止め・・・、
そして顔だけをかつての家族に向ける。
 「心配しないで・・・。
 わたしはいつまでもあなた達の妻でママよ・・・。
 麻衣が大きくなったら、わたしと同じような目に遭うかもしれない、
 その時は、必ず麻衣を助けに行くから・・・。
 さよなら・・・、大好きなあなた・・・、可愛い麻衣・・・。」
そう言うと、百合子は大きく崖をジャンプして、
つむじ風でも起こすかのようにその場から走り去ってしまった・・・。
 「百合子ーォッ!!」
 「ママァーっ!!」

洞窟内に伊藤達の叫びがこだまする、
・・・だが、その返事は返ってこない。
誰もかれもがその場を動けない・・・。
レッスルも・・・、マーゴも、ライラック、義純、ガラハッド、全ての者が、
伊藤たち家族の、数奇な運命を見守る事だけしかできなかった・・・。