Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

顔のない人形 その4

 「たっだいまー・・・。」
 「おかえりタケル、デート早かったわね?」 
 「・・・やーめーてよー、美香姉ぇ? そんなんじゃないってばよぉ。」
タケルは武蔵野市の自分の家に帰っていた。
この家には姉と二人だけで住んでいる。
二人の両親は、今から10年以上前に事故で亡くなっており、祖父も二年前に他界した。
姉は、短大卒業間近で就職も決まっている。
彼らは現在、残された多額の遺産で生計をたてているようだ。
 「ふーん、仲は進展してないみたいね? ま、いいわ、
 ちょーどご飯の支度するから、お米といでちょーだい?」
 「はいはいっと・・・、でもよー、アイツ変なんだよぉ?
 なんか・・・幻聴みたいなのが聞こえるらしくてさぁ。」
 「ええ? 大丈夫なの? 病気? アンタ今日子ちゃんそのままにして帰ってきたの?」
美香は野菜を切りながらタケルに問いかける。
歳は一つしか離れてないが、彼女は姉であり母親役もこなしてきた。しつけや礼儀にはうるさい。
 「だって、あいつバイトだし・・・とりあえず大丈夫だって・・・、
 それに何かあったら連絡するように言っといたよ。」
 「・・・そう、でも心配ね、タケル、バイトの終わる時間は知ってるんでしょ?
 あなたから電話かけなさい。」
 「だーかーらーおーれーは、かーれーしーじゃーなーいー・・・って、
 あーもぅわかったよぉ・・・。」
 「よろしい。」
タケルは美香に頭が上がらない。
美香は子供の頃からしっかり者の超優等生だ。
タケルは今では立派な体格に恵まれてはいるが、かつては泣き虫小僧として有名だった。
勉強も得意なタイプではない。
今日子には「シスコン」とからかわれている。
いつもと同じように、テレビを見ながら二人で夕食を終え、
ちょうど今日子の仕事が終わる時間になろうとしていた。
 「そろそろ・・・かな?」携帯から電話をかけてみる。
 ・・・でない、まだ働いてんのか?
タケルは少し不安になった。
 ・・・まさか・・・だよな?
余計な心配かとは思ったが、彼は職場にかけてみる事にした。
 「あ・・・すいません、従業員で・・・橋本今日子さんは・・・ええっ!? 無断欠勤!?」