Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

顔のない人形 その5

 「美香姉ぇ、やべー・・・アイツ職場に行ってねぇ・・・!」
タケルはオロオロと姉に訴えた・・・、でかい図体して情けない。
 「何ですって? だって吉祥寺の駅で見送ったんでしょう!?」
 「それは間違いねぇよぉ、最後はホームに立ってた・・・。」
 「階段は降りてないの?」
 「ああ、そこまでは・・・! お互い見送ってたし。 ・・・アイツ倒れたのかなぁ・・・?」
 「落ち着いて、アンタは家に電話してみなさい。
 家の人が心配するといけないから・・・、
 そうね? 自分の携帯落としちゃったけど何か心当たりないか、教えて欲しいとかなんとか、
 適当に口実つけて。」
タケルは高校の名簿を引っ張り出して、恐る恐る自宅に電話してみる。
・・・だがやはり答えは恐れていたとおりだ、彼女は帰ってもいないし連絡もない・・・。
それを聞いた後の美香の行動は素早い。
すぐさま消防庁に電話し、吉祥寺周辺で救急車の出動があったかどうか問い合わせた。
・・・「橋本今日子」でも18~9の女性でも該当者はいない。
吉祥寺駅でもそんな事件はないとの事だ。
 「ダメね・・・。あの子の職場って確かサンロードよね?
 駅からそんな離れてないし、
 何か事件に巻き込まれるにしては、目立ちすぎる道だと思うんだけど・・・。」
美香の行動力・判断力は二十歳そこらの学生の域を遥かに超えている。
そこらもタケルが頭の上がらない理由の一つだ。
 「け・・・警察には?」
 「うん・・・ご家族でもないのに、警察に問い合わせると大ごとになりそうだけど・・・、
 知り合いの刑事さんのツテで聞いてみるわ。」
美香は中学まで地元警察の剣道場に通っていた。そこならば知り合いは多い。
さっそく警察署に電話をかけ、事情を話し、吉祥寺周辺で事件が起きていないか聞いてみた。
 「・・・はい、そうなんです・・・、すいません・・・え? ええっ!?」
タケルは落ち着かずに、姉の電話の様子を窺うしか出来ない。
しかも常に冷静沈着な姉ですら、何か動揺しているように見える・・・。
 「美香姉ぇ・・・? ・・・どうなんだ?」
電話を切った美香は、厳しい目つきをしてタケルに振り返る。
 「・・・今夜、三鷹署・武蔵野署管内で、7件もの行方不明事件が発生しているんだって・・・!」