Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

顔のない人形 その6

その少女は六本木周辺を歩いていた・・・。
あれはテレビ朝日だったかな・・・?
今、放映している番組がウィンドウの奥に見える。
少女は、ぼーっと歩きながら、吸い込まれるようにその画面を見つめていた。
一人の女の子が映っているようだ。
何でかわからないが、その声がここまで聞こえている・・・。
 『クスクス、そう、そのまま真っ直ぐ歩いて右に曲がってね? もうすぐ私に会えるわよ。』
声は聞こえるが、その女の子の顔は遠くて判別できない。
だが、この声は間違いなく、今日、何度も耳にした声だ。

場所が場所だけに、この時間でも人通りはある。
この少女と同じ方向に歩く者もいれば、すれ違う者もいる。
誰もがお互いを注意深く観察する事などない。
せいぜい、可愛い女の子に色目を送るオヤジが時々いる程度だ。
だがもし仮に・・・、通行人を注意深く観察する人間がここにいたならば、
異様な表情で一つの場所へ集まりつつある者達に、
どんな恐ろしい事態が起きているのか、気づく事が出来たであろうか?

どちらかと言うと、その少女・・・
今日子は普段、目は細い方だが、今は大きく見開いている・・・、黒い部分より白目の方が大きい。
まばたきする事すら今はない。
メイクの関係で、瞳の周りの白い部分がやけに気味悪く浮かんで見える・・・。
歩き方も変だ・・・。
まるで機械のように、規則正しく一定の動作を繰り返して歩いている。
そして奇妙な事に、
まさしく同じ歩行パターンを有する者達が、六本木のとあるビルに集まり始めだしていた。
 ザッザッザッザッザッザッ・・・
ライトアップされたビルの入り口に・・・まるで操り人形の行進のように、
同じ間隔、同じ動作、同じ歩調で、
何人もの若者たちが、次々とそのビルの中に吸い込まれていった・・・。