Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

顔のない人形 その7

深夜だと言うのに大変な騒ぎになっていた・・・。
普通なら、最後に会ったということで、
タケルも長時間、警察に事情を説明するハメになるのだろうが、
事件が多発しているために、係の者が追いつかない。
今では都内だけで、40件もの行方不明が報告されていた。
警察に未だ届けが出ていないものも含めれば、三桁に数字が届くかもしれない。
もちろん、被害者達の家族も、届出の順番を黙って待ってるわけでもない。
同様の事件に巻き込まれた者同士、互いの事件の共通の接点を見つけて、不安を募らせていたのだ。
・・・そう、行方不明の家族の何組かが、
子どもたちに掛かってきた奇妙な電話や、彼らの異常な振る舞いを共通して目撃しているのだ。
中にはテレビに向かって話し出した者もいたという。
家族達の間では、その電話の相手に呼び出されたのではないか? という意見が強くなっていた。
ある中年夫婦の息子は、
「・・・ちょっと出かけてくる・・・」と言ったまま、連絡が取れなくなったそうだ。
近所の者に聞いたと言う母親は、その隣人が道端で挨拶したにも関わらずも、
自分の娘はまるで夢遊病者の如く、それを無視して通り過ぎ去ったと言う・・・。

今日子の両親は、不安な表情を顔にありありと浮かべていたが、
タケルや美香に丁寧な挨拶をした。
高校時代から娘に聞かされている男友達とは言え、
男のタケルだけだったら、ややこしい事になっていたかもしれない。
礼儀正しい美香がついていたからこそ、辛うじて今日子の両親も取り乱さずにいられたのだろう。
手を打つべき事を全て行った彼らは、
自宅で待機するしか、もはやすることは残されていなかった。
帰る道々、タケルは姉に尋ねる。
 「美香姉ぇ、電話で催眠術ってできるのかなぁ?」
美香はしばらく考え込んでから答えた。
 「・・・私にも分らないけど、不可能じゃないとは思う、
 でも、アナタの聞いた感じじゃ、あっという間に電話は切っちゃったんでしょう?
 なら、催眠術の類じゃないんじゃないかしら?
 幻聴のほうがやばくない?
 他の人が沢山いる場所で、今日子ちゃんにしか聞こえない声なんて・・・。」
 「・・・そうだよなぁ・・・。」