Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

顔のない人形 その12

玄関の鍵は掛かってる・・・、
どうすればいい?
 「あ・・・あの、お隣の方、すいません! ベランダに入れてもらえませんか!?」
誰が隣の住人かは分らなかったが、主婦達の視線は、少々の混乱の後、
一人の中年女性に注がれた。
 「お願いします! 何かヤバイかもしれないんです!」
その女性は、しぶしぶタケルを家にあげることにした。
万一の為にご近所の人にもついてもらう。
 「ありがとうございます!」
奥まで案内されると、タケルはベランダに出て、あっという間に避難用通路のしきりを蹴り壊した。
・・・あっけにとられる主婦達・・・。
タケルはそのまま部屋のガラス戸をチェック・・・、鍵はかかってない。
心臓の動悸を早めながら、部屋のガラス戸を開ける・・・うっ!?
なんだ、この匂い!?
 「すいません! 窓からごめんなさい! 誰かいませんか!? 今日子!? いねーのか!?」
後ろから主婦達もついてくる・・・「橋本さ~ん、ごめんなさ~い・・・。」
部屋は2LDK・・・隣の部屋が今日子の部屋っぽいが、彼女はいない・・・。
ダイニングは・・・ 「!!」
床に一面の赤い血が広がっている・・・。
さっきまで勇ましかったタケルもショックで動けない・・・、口も開けない・・・!
 「キャーアアアッ!!」
後ろの主婦達が叫び声を上げた。
タケルは震えながら後ろの主婦達を振り返り・・・
ビクビクしながら、その首をテーブルの奥へと覗こうと決心した。
血の海の床に誰か寝そべっている・・・
 嘘だろ・・・やめてくれよぉ・・・
 「お・・・おばさぁ~ん・・・あ、あぁ・・・ 」
今日子の母親が目を見開いて天井を見つめていた・・・、
瞳孔が開ききっている・・・。
カラダ中に切り刻まれた跡がある・・・テーブルには同じく血まみれの包丁がおいてあった。
今日子はどこにもいない・・・。
 「・・・いったい、誰が・・・なんでこんなことに・・・? 」
タケルは泣きそうな声をあげながら、ダイニングに一歩も入れずに、
その場に力無くしゃがみこんでしまった・・・。