Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

顔のない人形 その16

・・・タケルは無言で携帯を耳に当てる。
相手も何も喋らない・・・。
電話口からは、何か・・・ キュィーンと言うような、小さな音が聞こえる。
チューニングの外れたラジオのようだ。
意を決してタケルは口を開く・・・。
 「もしもし・・・?」
だが、電話は無言のままだ。
 「おい? 聞ーてんのか? おまえ、オレのダチんとこに掛けまくってんな?
 何とか言えよ!?」
相変わらず電波のような音しか聞こえない。
 「今日子に電話したのもおまえか? 『お友達になって』って・・・? 違うのか!?」
  プツッ・・・ツー・・・ツーッツーッ・・・
・・・電話はすぐに切れてしまった。
この電話が例の事件に関係あるのだろうか?
タケルの脳裏には、「この電話に掛け直す」行動が思い浮かんだが、
すぐに頭を振ってその愚かな誘惑を否定する。
その出来事から数分とかからずに姉の美香が帰ってきた。
 「お帰り、美香姉ぇ! 頼まれた事はやってあるよ! 怪しい電話番号も見つかった。」
美香は上着を脱いでタケルの元へ駆け寄る。
 「ホント!? どれ? ・・・相手は固定電話?」
タケルはその時、美香の香水がいつもと違うのに気づいた。
そういや、化粧もいつもより女っぽい・・・、探偵と会ってたって言ってたな・・・。
いや、今はそんなこと、どうでもいい。
 「それで驚く事があるんだ! この電話、さっき偶然オレんところに掛かってきたんだ。」
 「ええ!? 出たの!? ・・・それで何か喋った?」
 「いや、相手は無言・・・、こっちが何、聞いても壊れたラジオみてぇな雑音だけ。
 なぁ? 教えてくれよ、何がわかったんだ?」
 「う・・・ん、分ったといっても、推測の域を出ないの、試してみないと・・・。」
その言葉にタケルの全身の毛は逆立った。
 「な・・・試すって何を・・・?」