Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

顔のない人形 その31

 「ねぇ! タケル・・・あたし、ママのあんな顔・・・! あたしママを・・・!」
自分の意識を取り戻すと同時に、徐々に記憶が甦りつつあるのだろう、
今日子はその場に立ち尽くしてしまった。
デニムスカートと、
ボーダーのハイソックスの間にのぞかせている薄いピンク色の太ももが震えてる。
 「・・・今日子・・・! 落ち着けよ!
 ちが・・・そ、それが奴らの催眠術なんだ!
 そうやって相手を混乱させて意識を乗っ取ってるんだよ!」
タケルは何とか今日子をなだめようと、苦しいデマカセを言う。
 「ホント・・? ママは無事なの? 元気なの!?」
 「ああ・・・! 俺らはお前の母ちゃんに頼まれてここに来てんだぜ! 
 お前のことが心配でげっそりしてたけど・・・!」
さすがにそこまでの嘘は美香が慌てたが、もうどうにもならない。
それにこの場合、仕方がないのかもしれない・・・。
 「あ・・・あ・・・、タケルルルぅ・・・ありがと・・・。ありがとぉ・・・。」
今日子はまた顔をくしゃくしゃにして泣き始めた。
止むを得ず、その間、美香は辺りを見回す。
廊下やトイレに人の気配はない・・・、
部屋はいくつかあるが、これらの部屋のどこかに重要なものが隠されているのだろうか?
美香は一度、泣きじゃくる今日子に振り向いた。
 「・・・ね? 今日子ちゃん、操られていた間、何か覚えてる事はない?」
今日子は肩を揺らしながら何とか口を開いた・・・。
 「わ・・・わがりまぜん・・・、
 覚えてるのは・・・変な顔の無い女・・・長い髪とワンピースの・・・。」
背筋が寒くなった・・・。
そういえばあのテレビの映像・・・。
美香は黙ってカラダを前に向ける。
・・・ここは向こうからやってくる者を撃つには適した場所だが、常に襲撃に遭い易い場所だ、
手前の部屋に取りあえず入ってみるか。
美香はタケルを促し、先程のように扉を開ける、
・・・ここにも誰もいない。
応接室のような場所だ。
 ここで今日子ちゃんを休ませようかしら・・・?
美香がそんなことを考えていた時、彼女の携帯がまたもや振動した。
・・・今度はメールだ・・・。