Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

顔のない人形 その33

美香が叫び声をあげた!
 「キャアアアアアッ!!」
それに呼応するかのように、天井の化け物も異様な悲鳴をあげる。
 「キリィィアアアアアッ!!」
黒い異様な物体は天井を這いながら、
パーテーションに区切られた隣の部屋への隙間に潜り込む。
あっという間にその姿を消してしまった・・・。
今の物体が何であったか知ろうとする前に、美香もタケルも目の前の現実に凍り付いてしまい、
身動き一つする事が出来ない・・・。

 「あ・・・あ・・・!」
 「きょ ぉ こ・・・」
今日子と呼ばれていた少女の首から下は、大量の血液を放出しながら床に倒れこんだ・・・。
切り落とされたその頭部は、
目を薄く開いたまま、あらぬ方向をぼんやりと見つめている。
恐らく彼女はその最後まで、何も見なかったであろう・・・、
先程の涙でメイクは崩れたままだ。
やわらかそうな今日子の頬・・・、まだ幼さを感じさせるその唇・・・
これが作り物であったなら・・・。
タケルの引っぱたいた頬はまだ薄く腫れ上がっている・・・。
その不自然な表情が、全て現実の出来事である事を物語っている。
 「・・・う そ だ ぁ・・・!」
タケルの両膝が床に沈む・・・、腕を震わせ今日子の頭部をゆっくり抱きかかえる・・・。
 「うそだぁ・・・こんな・・・こんな、やめてくれよォ・・・
 きょうこ・・・きょおこおお!!」
タケルの目からは大粒の涙が流れ落ちる。
口からは絶え間ない嗚咽が漏れ続けている・・・、
こらえようの無い感情の波に押し流されてしまいそうになるが、
残酷な現実は泣き続ける事をも許してはくれない。

突如、隣の部屋から大勢の人間のわめき声が湧き上がったかと思うと、
ドカドカとタケルと美香のいる部屋に、
二十人はいるであろう集団が、洪水のようになだれ込んできた!