Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

顔のない人形 その38

 「・・そう言えば美香姉ぇ、
 さっきノーフェイスとか何とか言ってたよな、アレ何だ?」
 「詳しくは話してる時間がないけど、ここの社長はあるテロ組織の関係者かもしれないってこと。
 タケル・・・扉を開けてくれる?」
タケルは目を白黒させたが、確かに今は深く問い詰めれる状況ではない。
タケルは慎重に扉を開ける。
・・・社長室は明かりがついていない。
廊下の光が入り口付近を照らすだけだ。
美香が入ろうとするのをタケルが制止し、
一歩・・・また一歩と踏み出して、部屋のスィッチを手探りで探し当てた。
明るい光が部屋全体を照らす。
・・・!
一人の男が椅子に座っていた。
机の上にはパソコンと一冊のノートがある。
だが、男は机の上に眠っているかのように伏せたままだ・・・もしかするとこれは?
 「タケル、前後左右・・・天井も床も椅子の陰も全てに注意しなさい・・・。
 それで私の後ろに背中合わせで・・・。」
タケルは姉の言いつけどおり、背中をピッタリ合わせてあらゆる方向に気を配る。
美香はゆっくりと男のいる机に近づいた・・・。
この匂いは・・・
死臭か・・・やや鼻につく変な匂いがする。
・・・頭がざっくりと割れていた・・・。
流れ出た血は乾ききっている。
 「・・・死んでいるわね・・・。」
タケルは首をひねりながら驚く。
 「ええっ? そいつが首謀者じゃねーの? ここの社長なんだろ?」
状況から見て、背後から頭をかち割られてしまったように思われる。
・・・誰に・・・?
あの気味の悪い化け物にか・・・?
美香は慎重にノートに手を伸ばした。
何の変哲もない私的なスケジュール帳のようでもあるが、
間に数枚の便箋がはさんであった。
・・・まるで誰かに読んで欲しいとでも言わんばかりに・・・。
署名がしてある・・・児島道幹、
・・・間違いない、本人だ。
 「タケル・・・読んでみる?」
二人は周囲を警戒したまま、その便箋の内容に目を通した・・・。