黒の巫女・・・カーリー 5
「確かに、過去には行き過ぎた争いや不幸な歴史がある。
・・・それは認める。
だからこそ、我々は厳しい戒律を持ち、剣の使いどころには慎重な判断を下してきた。
少なくとも、我ら騎士団は神の名を汚すような事などはしない!」
「二言目には『神の名』ですって・・・。
ククッ・・・本当に愚かな・・・、救いようがないわ・・・。
ところでガワン様、あなたは60年前、
世界中からコテンパンに叩き潰された東洋の島国をご存知です?」
「60年前・・・? 島国? 日本のことか?」
「ええ、国名なんかどうでもいいんですけど、
敗戦して占領された国民が、敵の司令官に向かって、なんて言ってたかご存知?
『占領してくれてありがとう』ですってよ?
ついこないだまで、自分達を苦しめていた相手を・・・、
多くの同胞を虐殺した相手に向かって、拍手と歓声を以って彼をお見送りしたそうよ?
外から見てた白人達は、
自分達の洗脳の成果を称え、島国のサルたちをバカにしていたそうだけど・・・、
自分達も同じ目に遭ってることには全く考えが及ばないのよね・・・?」
「・・・何を言っている・・・
何を言ってるんだ貴様はッ!?」
「あなた達の言う『神』が、私たち人間に対して、
今まで何をしてきたか、知らないというんじゃないでしょうね?
聖書の記述ぐらい知らないあなた達じゃないでしょう!?
人間が「禁じられた木の実」を食べただけで楽園を追い・・・、
ソドムとゴモラの町を灰燼に帰し・・・!
バベルの塔を粉々に砕き、それまで築き上げた文明を消失させっ!
地上を大洪水で覆っては、人間を滅ぼしかけたッ!!
そんな狭量で・・・冷酷な・・・悪魔のような存在が・・・『神』であるはずないでしょうっ!?」
「ばかな! それは我々の祖先が罪を犯したからだ! 愚かだったからだ!!」
「ウフフ・・・そうね? 東洋の島国の人たちも同じことを言ってたらしいわ?
我々が愚かだったんですってよ?」
「き・・・貴様ぁっ!!」
ガワンの顔は怒りで沸騰しそうだ、・・・もしかしたら血管でも切れるかもしれない・・・。