黒の巫女・・・カーリー 6
「ガワン殿!! 落ち着いてください!」
後ろの声に振り向くと、「忠節の騎士」李袞がやってきていた。
「もしかすると、あなたを怒らせる事が目的かもしれません・・・、
熱くなっては相手の思う壺です。」
李袞の助言は的を得ていた。
後ろでハラハラして見ていたアキレウス部隊の部下達も、ホッと胸を撫で下ろす。
ガワンもようやく正気に返ったようだ。
カーリーも元の涼しげな笑い声に戻った。
「あら? あなたが李袞様ね?
別にガワン様を怒らせるつもりはなかったんですよ?
でも、あなた達をよこした騎士団本部の人選は見事ですね、
本部にはさぞかし、的確な判断力をお持ちの方がいらっしゃるんでしょうね。」
先程の激しいやり取りが過ぎ去ったせいか、マルコが口を挟む。
「・・・あー、カーリーさんよ、もしかして、これでお開きってことはないよ・・・な?」
「マルコ! 後であなたにはゆっくり話したい事があります!!」
どうもマジで怒ってるようだ。
「あ・・・ああ、あ、悪かったぁ! でも、こいつとは決着を・・・せめて・・・ダメ・・・!?」
「いい加減になさい・・・!
それに残念ですが、あなたとガワン様は二度と会うことはありません。」
その言葉尻に、そこにいる全員が緊張の糸を張る・・・、
解釈次第でいかようにも取れる発言だからだ。
カーリー自身、自分の言葉の波及効果に驚いてしまったようだ。
「あらあら、ごめんなさい。
・・・深い意味はありませんの。
ただ、初めてガワン様を拝見した時・・・あなたの背後に『死』の予兆が見えましたの・・・。
近い将来・・・あなたは命を落とすわ・・・、
是非、気をつけてくださいね・・・。」
「ほう、この私が殺されるとでも言うのか?
面白い、夜道に気をつければいいのか?
それとも飛行機事故か?」
カーリーは首を振る。
「いいえ・・・あなたは真正面から剣によって貫かれます。
明るい・・・午後の強い日差しの下で・・・。」