Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリー 新世界篇 出航2

 
 ユージンは、大仰な手振りで不満そうなジェスチャーをとる。
 「そりゃあね、安全ならそれに越した事はないけど、
 可愛い貴婦人もいないし、舞踏場も楽団もない、
 男だらけのバーで、お酒を飲んでもうまくもなんともないよ。」
 「ハハッ、お若いですな、さすがはユージン男爵だ、
 ・・・そうですな?
 では退屈しのぎに面白いものをお見せしましょうか?」
いきなりユージンの眼が輝く、よほど刺激に飢えているらしい。
 「何だい!? 手品? 財宝? それとも海の奇怪な生き物!?」
 「んん・・・ある意味、全てにおいてあってるかも・・・いや『海の』だけは違いますな?」
 「ええ? じゃ、じゃあ、手品で財宝で生き物ってな、な、なんだい!?
 早く見せておくれよ、っていうかそんなものがこの船のどこに!?」
船長は腰を上げた、
やれやれ、とでもいいたげに・・・。
 「しかたありませんな、ただし、一つ約束してもらえますかな?」
 「な、なんだい! 早く言ってくれよ!」
 「・・・この船で見たことは、本国に帰っても誰にも言わないでいただけますか!?」
なるほど、法に触れるのかもしれない、ということか。
 「お・・・おっけー、わかった、約束するよ。」
 「それと・・・!」
 「まだあるのかい!?」
 「約束ではありませんが、『アレ』に不用意な発言は慎んでください、命を保障しかねます。」
 「『アレ』? 『発言を慎む』!?
 お、おい、それって・・・まるで人間に・・・、ええ!?」
船長は部屋に残る船員達に指示をだし、ユージンとともに操舵室を出た。
二人はどんどん船の下層へと下りてゆく・・・。
この下は資材置き場のはずだが・・・。
船長はランプを片手に、ユージンを案内しながら、簡単な説明を始めた。
 「二週間前、船が港を出る前に、私はとんでもないものに会いました、
 それまで、見た事も聞いた事もないものです・・・。
 それは私に対してあることを要求しました・・・、『この船に乗せて欲しい』・・・と。」