緒沢タケル 秘密工場へ38
完全にタケルにスイッチが入った!
彼は体勢を低く構え、膝の角度を柔軟に曲げ、
・・・しかしながらその足は一歩も動かさずに、足首から膝、腰、そして両腕の捌きだけで、
全て敵の攻撃をかわしているのだ。
上半身は地面に対して完全に垂直のままだ・・・!
日浦も中国武術は門外漢だが、タケルの完璧な「いなし」を驚嘆するしか出来ない。
これが落ちこぼれと言われた緒沢タケルなのか!?
・・・もうここまで来れば大男は、じれて完全に自分の肉体を過信した。
上から圧し掛かってでも、タケルのカラダを掴まえようとしたのである。
・・・そしてタケルはそれを待っていた!
瞬間タケルのカラダが沈み込む!
そのカラダの動きは、後方に円を描きながらカラダの体重を・・・
いや、更に全ての力を載せて再び前方へ!!
既に掌は大男の胸を捉えている・・・密着してる。
傍から見ればタケルの腕は全く動いていない、最初から敵の胸に当ててるだけ!
だが、タケルの体内を循環したエネルギーは、相手の落下する体重をも吸収し、
分散される事なく強烈な衝撃波となって、一気に大男の内臓に向かって爆発するッ!!
これが「勁」だ!
間合いは全く必要としない、自らの肉体から起きる波動をそのまま相手に叩き込む!
その衝撃は筋肉の鎧に影響される事なく、津波のように敵の内臓を貫くのだ。
そしてその威力は・・・!
ドザァッ!!
日浦の首は後ろを向いていた・・・。
いや、日浦だからこそ、反応できたのだろう、
常人なら大男が突然視界から消えたように見えたかもしれない。
大男は日浦の脇をすっ飛び、はるか後方10メートル程の所に転がっていたのだ。
この巨体が!?
もう、男は悶絶しながら転げまわるだけだ・・・内臓が破裂しているかも・・・。