緒沢タケル 秘密工場へ39
首を戻してタケルを見た日浦は、背筋が寒くなるほどの戦慄を覚えた。
髪も長めの無造作ヘアーで、この長身・・・、
まるで鬼人だ・・・。
暗がりでもあるせいか、その形相ははっきり見て取れるものでもない。
だが、その闇に光る二つの眼光は狩猟動物のそれである。
冗談じゃない、地上のフロアで警備員を攻撃した時など、まるで本気じゃなかったのだ。
だが、日浦もいつまでも驚いているばかりもいられない。
すぐさま我に返ってタケルに声をかける。
「すごいな・・・、強いとは聞いてたけど、想像以上だ・・・!」
そこで、タケルもようやく戦闘態勢を解く・・・。
「まだまだ、達人クラスだと、触れただけで20メートルはすっ飛ぶそうですよ?」
「僕の仲間に、形意拳という武術を使うものがいるけど、いい勝負をするかもね?」
「ホントすか!? そりゃ機会があれば組み手でも是非!!」
周りにもう、所員がいないことを確かめると、日浦は手近な扉のロックを外そうとする。
・・・だが、このフロアのロックは、上のフロアのカードキーでは全く反応しない。
さらに厳重な秘密があるのか?
諦めた日浦は転がっている大男の所まで戻る・・・、
完全に泡を吐いて白目を剥いている。
もう反撃できやしまい。
途中でタケルも日浦の意図に気づく。
「あ、まさかそいつが・・・。」
「当然持ってるだろう、ここの番人ならさ。」
ビンゴ!
衣服の中からカードを取り出した日浦は、最寄の部屋へともう一度向かう。
ピッ!
ロックが外れる・・・。
日浦は一度、タケルに視線を合わせた後、そっと扉のノブをまわした・・・。