・緒沢タケルと「愚者の騎士」
だが、動物達は出てこない・・・。 「日浦さん、・・・やっぱりあいつら・・・。」 「恐らく、煙にやられたんだろう、 あの・・・檻に入れられた人間達も一緒に・・・、 証拠は・・・全て炎の中ってことだな・・・。」 「撮った画像やデータは?」 「勿論あ…
外人レスラ-の狂気のパンチが飛ぶ! だが、今度はタケルはかわそうとすらせず、真正面からその大きな手の平で受け止める! このレスラーが、タケルの真の恐ろしさに気づいたのは、 たった今、この瞬間・・・、 そして全てが後の祭りだった・・・。 「・・・…
「タケル君!」 急かす日浦に、タケルは振り返り、急いで階段を駆け登る。 地下2階・・・そして地下1階! 下のフロアからは更なる爆発音が聞こえてくる、 地上まで、もう一息・・・! 全ての階段を昇りきり、 後はこの施設から脱出すれば! そして、廊下に…
ガガァン!! ・・・シャッターは床まで降りきらなかった・・・。 だが、タケルも日浦も目を疑った・・・。 何故!? 床とシャッターの隙間に・・・、 このフロアーに閉じ込められてたライオンや猿が、 脇の廊下から駆け寄り、その身を差し入れていたのだ・…
二人は急いで部屋を出る! その時、 大きな衝撃音と建物全体が揺らぐ。 エレベーターは上に昇ってしまっている・・・ダメだ、反応もしない! 「これは僕の仲間の爆破ではない! 早く出よう、何もかも吹き飛ばすつもりだ!!」 日浦が叫ぶ! タケルたちは非常…
彼らはあくまでも、研究者、 少々、銃の扱いは習ってるようだが、しょせん素人なのだ。 「後は頼むよ、タケル君!」 「うっす!」 銃がなければ、怖くもなんともない。 タケルは目にも止まらぬ速さで白衣の者の持つ拳銃を蹴り飛ばした。 部屋の隅に拳銃が転…
? 日浦は笑っていた・・・この状況で!? いったい、どんな脱出法が? その時、研究所内にけたたましいサイレンが鳴り響く。 どうやら、地上の警備員が目を覚ましたか、交代の人間がシステムを作動させたようだ。 いや、ことによると、今、拳銃を構えてる研…
日浦は更に言う。 「これが本当にキミに教えたかった事さ。 この世界の真の姿・・・スサの血を引くキミがどんな反応をするかね? 安心したよ、キミは純粋に怒りの感情を見せてくれた・・・。」 「オレに・・・、オレに何をしろってんです・・・!?」 「早急…
「すまない、ガラにもなく、興奮してしまったようだ、 勿論、キミを責めてるわけじゃない・・・。 いや、個人を責める事などできやしない。 これは・・・人間全体の罪なんだ・・・。」 「人間の・・・罪?」 「そうだ、誰も自分たちがやってることを悪だなん…
別に日浦に文句を言ってもしょうがないのだが、 タケルは、この湧き上がる怒りをどうぶつけていいかわからない。 一方的に責められたカタチの日浦は、詰め寄るタケルを反論するかのように右手で払う。 「問題はそれだけじゃない・・・!」 「ああ!?」 「肝…
タケルは振り向くのが怖かった。 後ろの直立するガラスケースに詰まっているのも人間だって言うのか? ゆっくり・・・タケルは怯えるかのようにゆっくり首を曲げた・・・。 にん ・・・げん? ガラスケースの中にいる物の口と思われるところから水泡が見える…
この部屋も照明はついていないが・・・、 タケルも・・・日浦も、これまで見てきた部屋の異常さから、 この部屋についても、何らかの衝撃を受ける事になるだろうとは予想は出来ていた・・・。 だが・・・、これは・・・? 部屋のあちこちに光が浮かび上がっ…
首を戻してタケルを見た日浦は、背筋が寒くなるほどの戦慄を覚えた。 髪も長めの無造作ヘアーで、この長身・・・、 まるで鬼人だ・・・。 暗がりでもあるせいか、その形相ははっきり見て取れるものでもない。 だが、その闇に光る二つの眼光は狩猟動物のそれ…
完全にタケルにスイッチが入った! 彼は体勢を低く構え、膝の角度を柔軟に曲げ、 ・・・しかしながらその足は一歩も動かさずに、足首から膝、腰、そして両腕の捌きだけで、 全て敵の攻撃をかわしているのだ。 上半身は地面に対して完全に垂直のままだ・・・…
それは奇妙な光景だった・・・。 日浦の腕を掴んだ大男の手首を、 ・・・さらにまた回復したタケルの腕が握りしめていたのである・・・! 「タッ・・・タケル君っ!?」 「てんめぇぇぇぇ・・・! ゲホッ、 よくも後ろからやってくれたよなぁぁぁ!?」 大男…
うずくまる大男の顎先へ強烈な前蹴りっ! 頭が大きく跳ね上がり、大男の口から唾液の泡が飛ぶ! ・・・だが、あろうことか、ゆっくりとだが大男は首を戻し、口元から笑みを浮かべたのだ・・・! 効いていない? どれほど頑丈な首をしているのだ!? 勿論、痛…
「フーアーユーッ!!」 タケルの首をねじ上げるこの腕の太さ、声の位置、 紛れもなく、タケルの巨体に並ぶ体格の持ち主だ。 しかも相手がプロなら、タケルはあっという間に落とされてしまうはずだ。 日浦のナイフ捌きは達人の域にいる。 だが、もつれあう二…
二人は部屋を出る。 「日浦さん、・・・あいつら助けなくていいんですかね?」 「助ける? 檻から出せって事?」 「危なすぎ・・・ますかね?」 「今の所、僕ら二人じゃどうしょうもないだろう、 第一、檻から出したとして、彼らはどこに行くんだい? 人間の…
「ああ、ホルマリン漬けの・・・ え・・・、そ、そんなまさか・・・!?」 タケルの脳裏に一つの恐ろしい考えが浮かぶ。 まさかあの動物達の脳みそが・・・。 「勿論、全部じゃない、 恐らく脳組織の一部だけだろうけど・・・移植されているみたいだな・・・…
「じ・・・人体 実験・・・この日本で!?」 タケルの興奮に触発されたか、檻に入れられた人間達も騒ぎ始めた。 ただ、唸り声を上げるものもいれば、普通に日浦たちに訴えかける者もいる。 「おい! おい! ここから出してくれよ! 光を浴びたいんだ! 草原…
叫び声らしきものは、常時響き渡っているわけでもない。 断続的に、しばらく静かだったと思うと、何回も連続で沸き起こったりしている。 部屋の特定は簡単だった。 もう、間違いない。 人間の声だ。 時折歌のような物も聞こえる。 「この部屋だね・・・、一…
「ナンだ、こりゃあ・・・!?」 タケルは息を呑む・・・。 みんな・・・どの動物も頭部を切開されて、中の脳みそが一部切除されているのだ・・・。 動物の種類は先ほどの生きているもの達とほぼ同種だ・・・。 爬虫類は今のところいないようだが・・・。 「…
日浦とタケルは別の部屋を探してみる。 研究室には、いろんな書類や実験データなどの資料が置いてあるようだが、 勿論、タケルにはチンプンカンプンだ。 部屋の中や書類を見回しても何の意味もない。 日浦だけが時折、デジカメで資料を写したり、部屋の内部…
しばらく二人は、部屋のあちこちを観察する事しかできなかった。 部屋は、檻やガラスケースが陳列されている棚で通路が作られている。 ・・・それにしてもひどい匂いだ。 日浦は別の陳列コーナーを見つけた。 「こっちのコーナーは・・・爬虫類だよ、 蛇やト…
「日浦さん!」 日浦が戻ると、タケルの手には白衣と紙切れ・・・。 「カードケースの中にこれが・・・。」 カードそのものは入ってないようだが、4桁の数字が書いてある。 暗証番号だ! 「でかした! これでどうにかなるな! 問題はこの暗証番号が一部屋だ…
「さっきの警備員はここまで来ることが出来ない、 てことはどういうことか分るかい?」 「え・・・、下には誰にも見られてはいけないものがある・・・ってことですよね?」 「それはそうだ、だが、そんな事じゃない、 ここは、『さっきの警備員は地下に行く…
タケルが三人・・・いや、四人の体をソファやイスに寝かせてる間、 日浦は中央監視室のメインモニターや機械をチェックしている。 建物のセキュリティ構造を頭に叩き込んでいるようだ。 時々スィッチを操作している・・・。 「・・・よし、これでしばらくは…
一人の警備員はヤケ気味にタケルに向かい、もう一人は部屋にUターンする。 警報装置を鳴らすのだろうか? もちろん、そんなマネは日浦が許さない!! 警備員が操作盤の前に立つか立たないか、 その寸でのところで、背後から日浦の手が伸びる・・・。 ・・・…
「タケル君、すぐ警備員がでてくるはずだ、気を張っておけよ?」 えっ・・・。 建物の中は薄暗いが、所々電気がついている。 入ってすぐ右手に、明るいガラス張りの部屋があるようだ。 案の定、日浦が言ったとおり、中には制服姿の警備員がいた。 日浦達の姿…
「でも、監視カメラとかビデオ記録が残ったら?」 「残ってもいいんだ、サングラスかけときなよ? さっきも言ったが、 証拠を世間に晒せば、やつらはこの日本で非合法の活動は二度とできなくなる。 犯人探しなんてやってる余裕はなくなるよ、 僕らもそれで仕…