Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

緒沢タケル 秘密工場へ41

 
タケルは振り向くのが怖かった。
後ろの直立するガラスケースに詰まっているのも人間だって言うのか?
ゆっくり・・・タケルは怯えるかのようにゆっくり首を曲げた・・・。
 にん ・・・げん?
ガラスケースの中にいる物の口と思われるところから水泡が見える・・・。
やはり生きているのか!?
では、・・・この異様な体毛は?
関節が人間のそれとは違うのに?
こっちは眼球が開いているが、顔面から浮き出て今にも顔から零れ落ちそうだ・・・。
指先などは・・・いや、蹄といったほうがしっくり来る。
 「ナンだよ、これぇ!?
 日浦さん・・・これ、いったい!?」
 「・・・最初から『こう』だったのか、・・・それともこの会社の手術でこうなったのかは、
 調べてみないとわからないが、
 彼らが人身売買を行っている、という情報が僕らの組織に入ってきてね・・・。」
 「じ、人身売買!? こ、この21世紀に!?」
日浦は冷たい顔で、タケルに振り返って言う・・・。
 「そんなものはどこにだってあるさ、この日本では珍しいだけなんだけどね・・・。」
 「嘘だろ・・・、こんな赤ん坊を・・・?」
 「別に驚く事じゃないだろ、キミだってニュースぐらい見てないのかい?
 高校生が子供を生んだだの、病院の前に赤ん坊が置き去りにされただの、
 それこそ、ニュースにもならないが、望まれないで生まれてきた子供なんて沢山いるさ。
 捨てるぐらいなら売ったほうがよっぽどマシ・・・、
 そう考える親がこの世には溢れるほどいるのさ・・・。」
冷静に答える日浦の口調は、非道を憎むタケルの心に火をつけてしまったようだ。
 「・・・ハァ!? ふぅざけんなよ! 親が子供を売ったぁ!?」
 「勿論、誘拐も考えられなくもないが、そんなことしたら後々面倒だ、
 ・・・直接、親から買い付けるのが、一番危険が少ないんだろう。」
 「冗談言うなよ! そんなもんがこの東京でまかりとおっているつーのかぁ!!
 警察にも新聞にも見つからずにぃ!?
 どんだけ腐っていやがんだぁ!!」