Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

暗殺者ザジル 2

 
その時、長い髪のザジルは横目でツナヒロを見下ろした・・・。
 「バカめが・・・。」

 男に隙ができた!
ユェリンが飛び出す!
 「しまったっ!!」
これまでクールに振舞っていたザジルが初めてうろたえる。
・・・そして、ユェリンの攻撃対象は・・・
 「ユェリンっ!?」
彼女の細い腕から伸びる尖った針が、ツナヒロの太もものを突き刺す!
・・・いや、彼女の事を注視していたおかげで、
すんでにツナヒロは身をよじり、針は太ももの皮膚をかすめ、ズボンを切り裂く。
 「な、・・・何をするんだっ!?」
 「どうして・・・! ツナヒロ様・・・、
 あれほど言ったのに!! なんでそんな恐ろしい事を考えるのですか!?」
ツナヒロはユェリンの両腕を抑え込んだはいいが、
彼女の行動を理解することもできない。
二人の揉み合いを他所に、
・・・まさしく他人事のようにザジルは見下ろしていた。
 「なるほど、足を狙うか・・・、
 ツナヒロが翻意を見せたら、歩けなくしてでもこの国にいさせよという命令だな・・・。」
 「なっ!?」
聞きたくもない言葉が、ユェリンの頭の向こうから聞こえてくる。
一方、ユェリンの表情は、これまでの彼女とは別人かと思うほどの乱れた表情だ。
 「ユェリン・・・オレを騙していたのか・・・。」
彼女は答えない・・・、代わりに口を開くのはザジルだ。
 「何、今さら言ってるんだ、
 昨夜オレが言っただろう? 全部、お膳立てされてるんだよ・・・。」
腕力ではユェリンはツナヒロに敵わないのは当たり前だ、
彼女はここで大声をあげる。
 「衛兵! 衛兵!!」
ツナヒロにとっては、もはやそんなことはどうでもいい。
 「ユェリン! オレに言った言葉は全部でたらめなんだな!?
 オレに向けた笑顔も・・・表情も・・・
 オレの腕の中で甘えて見せたのも、みんな・・・っ!!」