暗殺者ザジル 5
しばらくツナヒロは金魚のように口を動かすしかできなかった。
ようやくそれが言葉となる・・・。
「な・・・何を言ってるんだ!?
地獄? あの世にって!?
ちょっと待て!! 聞いたろうっ? ユェリンはオレを騙してなんかいなかった!!
二人ともだ、頭を冷やせ!
オレとユェリンが二人でここを抜ければ万事解決だろ!?
そうすりゃ・・・。」
「無駄だ、あの施設で育った者は、もう、他に生きる道を知らない。
そういうように育てられてしまったんだ。
だからこそ、オレは一人で行動している。
この国を裏切るなんて行為は、自ら死を願う行為と変わらないように刻みつけられている。
ありとあらゆる恐怖を伴ってな・・・。
だからツナヒロ、
その女は、オレ達を逃がさないためにありとあらゆる手段を取るだろう。
その女がいては、ここを出られないんだ。
いつまでもグズグズしてるなら、この計画自体、おじゃんだ。
オレは最悪の場合、ツナヒロをも始末するぞ?」
そんな・・・。
身の危険を感じて今度はユェリンが、憎悪の炎を燃やしザジルをにらみつけた!
「ザジル! よくも・・・よくも私のツナヒロ様を・・・
私の幸せをぐちゃぐちゃにしてくれたわねっ!
お前に・・・お前なんかに何の権利があって・・・!!」
「フン、オレに?
何言ってる、・・・オレ達にそんなもの、はじめから存在しなかっただろう?
お前は一生、肉人形・・・オレはただの暗殺者・・・、
いや、一生じゃないか、
肉体のピークが過ぎて役にたたなくなったら、奴隷以下の扱いだもんな・・・。
オレ達に権利や自由なんてものは最初からない。
だったら、この手でつかみ取るしかないだろう!」
そしてザジルは一歩ずつ間合いを詰める・・・。
どうすればっ?