Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

暗殺者ザジル 6

 
その時、ツナヒロの視界に・・・階段の下から下男がこっそり登ってくるのが見えた。
ちょうど、ザジルの真後ろ・・・ツナヒロにはザジルの下半身の向こうに見える。
勿論、同じ方向を向いていたユェリンにもそれがわかっていたが、
「教育」を受けているユェリンは、その反応を表に出すことなどあり得ない。
しかし・・・ツナヒロのカラダは、それを一瞬、動揺として露わに反応してしまったのだ。
そしてそのツナヒロの反応が何を意味するか、
「暗殺者」として育ったザジルには、次に何が起こるのか瞬時に理解できていたのである。
下男が包丁を振り上げ、ザジルの背中に投げつけたとき、
ザジルは常人の目にもとまらぬ跳躍・・・宙返りを行い、
これまた誰の目にも触れぬ指先の動きで、下男の咽喉元を切り裂いていた・・・!

そして悲劇が・・・。

 「ユェリン!?」
ツナヒロが大声をあげて、初めてザジルも気がついたのである。
下男の投げつけた包丁は、
あろうことか、ユェリンの柔らかい肌に突き刺さっていた。
背中から・・・胸中央に近い場所に・・・
 「ツ・・・なひろ・・・さ・・・ま・・・。」
 「ユェリーンッ!!」
彼女の手から凶器がこぼれる・・・。
力もどんどん失われていく・・・。
ユェリンは死を覚悟したのか、
ツナヒロの胸に沈み込んだ・・・。
 「ツナヒロさま・・・あっ・・・たかい 」
 「うそ・・・嘘だ・・・こんな・・・。」
なんで・・・こんな立て続けに親しい者たちが・・・、
ノートン・・・ドナルド・・・それにユェリン・・・
何もできないツナヒロに、
ユェリンは薄い頬笑みをようやく浮かべる事が出来たようだ・・・。
 「ツナヒロ、様・・・、ユェリンは・・・幸・・・せでした・・・」
・・・そして力尽きたのか、彼女の瞼は閉じられる・・・。