Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

閑散とするショップ

 
 「待って下さい、せめて理由を!
 それにキャンセル料が・・・」
 「黙れ、ピエリ!」
店側に原因がなければ、キャンセル料を請求できるケースだ。
だが、昔堅気の職人である父親はそれを良しとはしない。
それにこれまで上客だったアブリーに、そんな真似を取れる訳もない。
ここは次回の注文を受け易くするためにも、快くキャンセルに応ずるべきなのだ。
父親とピエリは黙って頭を下げ、静かにアブリーを見送った。
 「大丈夫だ、ピエリ、
 我々に問題はない、きっとアブリー様に何かあったのだ。
 それを他人に知られたくないのだよ・・・。」

実際、注文された品が途中でキャンセルに遭うのは、稀なケースではあるが、
時に起こりうるケースだ。
父親は深刻に受け止めることもなく、
いずれ自分の跡を継ぐであろうピエリに、
こういうことも勉強の一環だと、前向きに考えることにしていた。

だが・・・今後、
次第に「何かがおかしい」という感覚が、
ピエリのみならず、父親にもはっきりと受け止めざるを得ない状況へと変化していくことになる。

 「・・・最近、売上が悪いなぁ・・・。」
それだけではない、
めっきり客足も鈍っている。
明るい母親は父親とピエリを元気づける。
 「何言ってるの、みんな王様の戴冠式の時にお金使い果たしちゃったのよ、
 もう少ししたら元に戻るわよ。」
 「ううん、でもなぁ、店に足を入れる客自体、減ってるんだけどなぁ・・・。」
しかも、店の前の人通りに変化はないような気はする。
周りの商店も特に寂れている気配もない・・・。