Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

悪夢の終焉 2

 
 「・・・フラア様、いかがですか、このドレスは?」
 「・・・こんなの着なきゃいけないの?
 きついし・・・カラダが動かせないわ・・・。」
 「ご安心を・・・着付けは我らにお任せ下さい、
 歩き方は・・・一朝一夕には身につかないでしょうが・・・、
 せめてしずしずと歩いていただければ・・・。」
普通に会話しているように見えても、
自分が王族として振舞う事に、フラアは強い抵抗があった。
周りが自分の事を皇女だとか、言い出したって、
本人が一番、信じられないでいる。
自分はラシのダウンタウンで育った、礼儀もろくすっぽ知らない小娘なのだ。
それに家族の命を奪ったウィグルに、
どうして自分が王族として生きて行かねばならないのか。
これから夕食会だと言うが、
行って全てのテーブルの料理をひっくり返してやろうか、
直前までそんな風に思っていたのである。

直前まで?

その時一つだけ、彼女の気を変える出来事があったのだ。
アイザス王やディジタリアス、そしてお呼ばれしたツォンが席に着くそのテーブルに、
侍従官が大きな絵画を手にしてやってきていたからだ。
そこにあるのは、一人の美しく若い女性が描かれていた・・・。

 その女性の姿は・・・!?

そこにる全ての者・・・テーブルについていた者たちだけでなく、
壁に控えている世話人やら、料理を運ぶ給仕も含め、
全ての人間が、その絵に描かれた女性とフラアを交互に見比べていたのだ・・・。

 その女性のドレス・・・煌く黒髪・・・そして大きなルビーと思しき髪飾り・・・。

それはまさしく今、その場にいるフラアと同じ姿なのである。