Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

シルヴァヌスの森 31

 
二人の部下は、剣を薙いで、タケルの進む道を作る。
ぬかるみや、まとわりつく小動物・・・昆虫になど怯んでいる暇はない。
 『・・・タケル聞こえるか! 近いぞ!! 周り全てに注意しろ!』
いよいよか・・・!
正直、まだ膝がガクガクするが・・・、
天叢雲剣も、あと1、2回の発動なら・・・。
 「うゎっ!」
部下たちが足をいきなり止めた。
 「ん!? どうしたぃ!?」
 「タケル様、この先は谷のようですが、木立が深すぎます!
 迂回した方がよろしいかと・・・。」
タケルが彼らの所まで追いつくと、
成程、眼下にすり鉢状の谷がある。
周りを見回すも、迂回するとしたら、かなりの遠回りだ。
 「・・・よし、お前らは迂回しろ。」
 「そんな・・・! まさかタケル様、この斜面を!?」
 「行くっきゃねーだろーがーっ!!」
言うが早いか、タケルはいきなり駆け降りはじめた!
無謀かもしれないが、時間はあまりないのだ。
こうしている間にも、グログロンガやクリシュナ部隊だって安全とは言えないのだ。
それに道のりが長ければ長いほど、それだけトラップに遭う危険も多い。
一気に決めなければ・・・!

斜面は確かにとんでもない角度で、一度走り始めたら、止められそうにない。
だが、深すぎる木立が幸いに、
タケルは、木々の柱をストッパーに、もう飛び跳ねながらという形容が相応しく、
ズダダダダダっと駆け降りてゆく。
その間も鳥たちが襲ってくるが構うものか。
タケルの恐るべき反射神経は、
中国拳法の掌底で全ての鳥どもを撃ち落としてゆく!