顔のない人形 その36
「もう・・・いいのよ・・・、ね?
あなたのせいじゃない・・・、
あなたのせいじゃないのよ・・・。」
タケルのその四肢から、張り詰めた緊張の糸がほどけていく・・・。
だが、タケルは自分の口から言葉を出す事が出来なかった。
どれぐらい時間が過ぎたのか、しばらくして、
・・・ようやくしぼるようにしてタケルは言葉を吐きだす・・・。
「・・・でも、姉ちゃん・・・オレ、今日子を守る事も・・・助ける事も出来なった・・・、
ずっと昔っから・・・姉ちゃんに負けてばかりで・・・見返してやるんだって・・・
カラダ鍛えてきたのに・・・
こんなにでかくなったのに・・・、
強くなったって、結局何の役にもたてねぇ・・・ 」
美香は静かに首を振る。
「・・・また『姉ちゃん』に戻ってるわ・・・。
それに今日子ちゃんのことはつらいけど、あなたは私を守ってくれてるでしょう?」
「? 姉ちゃ・・・何言ってんだよ、
美香姉ぇ、オレの助けなんかいらねーだろ・・・?」
「バカね、こんな恐ろしい人たちに囲まれて平気なわけ無いでしょう?
あなたがいるから、私はくじけないでいられるのよ?
・・・それよりあなた、ケガは!?」
タケルは辺りを見回し、ようやく落ち着きを取り戻してきた。
・・・改めて自分のしでかした暴力の結果に怯え始めてしまう・・・。
「・・・オ、オレは大丈夫・・・血は出てるけど、ダメージはないよ・・・。」
タケルの厚い筋肉の鎧は、少々の刃物など通さない。
流血は激しいが、こんなものはすぐに止まる・・・。
それにしても状況は最悪かもしれない。
タケルの攻撃を喰らった者達は、ほとんど一撃だけなのだが、その一撃が致命的なのだ。
人命を優先するのなら、すぐさま救命活動に入らねばならないのだが、
かといって例の化け物をほっとくわけにもいかない。
「タケル・・・、ちょっと・・・。」
美香はタケルを呼んで、手近なけが人をエレベーターに運ばせた。
下に搬送するためではない。
これ以上、外からあの集団がやってこれないように、
定員オーバーになるまでけが人を載せ、エレベーターをストップさせるためだ。
管理会社か管理人が気づけばそれはそれで良し。
それまでには片をつけよう・・・!
美香はこれまでの状況を手短にまとめ、例の探偵へとメールを送る。
あなたのせいじゃない・・・、
あなたのせいじゃないのよ・・・。」
タケルのその四肢から、張り詰めた緊張の糸がほどけていく・・・。
だが、タケルは自分の口から言葉を出す事が出来なかった。
どれぐらい時間が過ぎたのか、しばらくして、
・・・ようやくしぼるようにしてタケルは言葉を吐きだす・・・。
「・・・でも、姉ちゃん・・・オレ、今日子を守る事も・・・助ける事も出来なった・・・、
ずっと昔っから・・・姉ちゃんに負けてばかりで・・・見返してやるんだって・・・
カラダ鍛えてきたのに・・・
こんなにでかくなったのに・・・、
強くなったって、結局何の役にもたてねぇ・・・ 」
美香は静かに首を振る。
「・・・また『姉ちゃん』に戻ってるわ・・・。
それに今日子ちゃんのことはつらいけど、あなたは私を守ってくれてるでしょう?」
「? 姉ちゃ・・・何言ってんだよ、
美香姉ぇ、オレの助けなんかいらねーだろ・・・?」
「バカね、こんな恐ろしい人たちに囲まれて平気なわけ無いでしょう?
あなたがいるから、私はくじけないでいられるのよ?
・・・それよりあなた、ケガは!?」
タケルは辺りを見回し、ようやく落ち着きを取り戻してきた。
・・・改めて自分のしでかした暴力の結果に怯え始めてしまう・・・。
「・・・オ、オレは大丈夫・・・血は出てるけど、ダメージはないよ・・・。」
タケルの厚い筋肉の鎧は、少々の刃物など通さない。
流血は激しいが、こんなものはすぐに止まる・・・。
それにしても状況は最悪かもしれない。
タケルの攻撃を喰らった者達は、ほとんど一撃だけなのだが、その一撃が致命的なのだ。
人命を優先するのなら、すぐさま救命活動に入らねばならないのだが、
かといって例の化け物をほっとくわけにもいかない。
「タケル・・・、ちょっと・・・。」
美香はタケルを呼んで、手近なけが人をエレベーターに運ばせた。
下に搬送するためではない。
これ以上、外からあの集団がやってこれないように、
定員オーバーになるまでけが人を載せ、エレベーターをストップさせるためだ。
管理会社か管理人が気づけばそれはそれで良し。
それまでには片をつけよう・・・!
美香はこれまでの状況を手短にまとめ、例の探偵へとメールを送る。